AIを用いた歩行時の膝関節ラテラルスラスト検知モデルの開発と精度検証

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抄録

<p>【目的】</p><p> 膝関節のラテラルスラスト (以下、スラスト)は、変形性膝関節症 (膝OA)進行のリスク因子として既知であるが、臨床現場ではスラストの判別は視診により行われ、評価者の主観と経験に大きく依存する。慣性センサを用いた近年の提案手法は機器依存性が高く、臨床での実用には障壁がある。膝OAの進行予防のためにも、臨床現場で使用できる簡便・客観的にスラストを判別できるシステムを確立することは重要である。本研究では、姿勢推定AIであるOpenPoseと機械学習を組み合わせ、スラス トの自動判別モデルを構築し、性能を検証することを目的に実施した。 </p><p>【方法】</p><p> 人工膝関節全置換術、単顆置換術、半月板修復術を施行予定の膝OA患者27例54膝、膝に症状を有さない肩関節の手術予定患者3例6膝、健常若年者5例10膝の歩行を撮影した。スラストの有無は経験豊富な理学療法士2名、整形外科医1名による合議で決定した。撮影した動画からOpenPoseを用いて股関節、膝関節、足関節の位置を推定し、立脚期中の膝関節の最大内反角度、最大内反角速度、内反角度変化量、外側への最大移動量、立脚時間を特徴量として算出した。すべての特徴量の組み合わせに対してサポートベクターマシン(SVM)を用いたスラスト検知モデルを作成し、感度、特異度、AUC (Area Under Curve)を計算した。既存手法として、SVMモデルで最もAU Cが高かった特徴量の組み合わせを用いて、ロジスティック回帰 (LOG)モデルを作成し、同様に検証した。さらに、スラストの有無の二群間で、特徴量の群間差を比較した。 </p><p>【結果】</p><p> 70膝中スラストあり (真値)は24膝 (34%)であった。膝関節の最大内反角度、最大内反角速度、内反角度変化量、外側への最大移動量を特徴量としたモデルで最もAUCが高く、SVMモデルは感度79%、特異度83%、AUC0.88、LOGモデルは感度79%、特異度70%、AUC0.70であった。スラストあり膝では最大内反角度、内反角度変化量、外側への最大移動量が有意に大きかった (p < 0.05)。 </p><p>【考察および結論】</p><p> 本研究で作成したモデルは慣性センサを利用した先行研究 (感度:75~95%、AUC:0.75~0.90)と比しても十分な性能を有しており、スラストの有無の判定に利用可能であると考えられた。動画の撮影と機械学習で構成される本法は、簡便かつ客観的に評価可能であり、重症化しやすい膝OA症例を早期に検出し、適切に介入する機会を創出できる可能性がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,研究の実施に先立ち所属施設の倫理委員会の承認 (承認番号: M2021-261)を得て,被験者には研究の意義,目的について十分に説明し,同意を得た後に実施した</p>

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