フードコート型飲食店における腰痛リスク軽減に向けた人間工学的な関わり:活動報告

DOI
  • 白幡 吏矩
    羊ケ丘病院 リハビリテーション科 北海道医療大学大学院 リハビリテーション科学研究科
  • 後藤 祐紀寿
    祐川整形外科医院 リハビリテーション科
  • 清野 秀汰
    青森県立中央病院 リハビリテーション科
  • 川村 有希子
    株式会社三菱総合研究所 イノベーション・サービス開発本部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 腰痛は日本人の多くが経験する。厚生労働省による「職場における腰痛予防対策指針」では、前屈等の姿勢を取らないことが推奨される。人間工学に基づく作業環境は適切な作業姿勢に繋がり、腰痛リスクを軽減させる可能性がある。一方、産業保健分野での理学療法士の活動として人間工学的な介入に関する報告は少ない。また、異業種を対象とした報告は限られている。飲食店を対象に人間工学的な関わりによる腰痛リスク軽減の可能性を検討することを目的とした活動を実施したため得られた知見を報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 対象はフードコート型飲食店で、店舗に滞在する従業員は常時 1~2名、作業内容は調理、接客であった。はじめに、作業環境、実際の業務中の動作(以下、作業動作)を観察した。その後、従 業員1名を対象に既存の作業台および先行研究を基に設定した2条件の作業台の高さでの模擬的な動作(以下、模擬動作)における作業姿勢を観察した。作業環境変更による満足度を5件法、自由記述式のアンケートにて調査した。作業姿勢の定量的指標として静止画を基に画像解析ソフトImage Jを用いて体幹傾斜角を算出した。 </p><p>【結果】</p><p> 体幹傾斜角は、作業環境変更前13.9°、変更後の2条件で4.4°、 2.1°であった。アンケートでは、身体への負担が軽減される と感じるか、作業が楽だと感じるかという問いに「感じる」、作業環境の変更は現実的だと感じるかという問いに「どちらかというと感じる」との回答であった。また、従業員の体格差、コストが作業環境変更の障壁となりうると回答が得られた。作業姿勢は模擬動作と作業動作で異なる姿勢を示し、体幹傾斜角はそれぞれ0.7°、19.0°であった。 </p><p>【考察】</p><p> 作業環境の変更により腰痛リスクを軽減させる姿勢変化や一定 の満足度が得られた。一方、従業員の体格差、コストが作業環境変更の障壁となる可能性がある。飲食店のように同一の作業場所を複数人が使用する場所での作業環境変更には検討の余地があり、作業姿勢指導・運動指導を中心とした関わりが必要となる。また、模擬動作と作業動作では異なる姿勢を示したため、作業姿勢の評価、指導は実際の業務中の動作を対象にすることが重要である。 </p><p>【結論】</p><p> 理学療法士による異業種への人間工学的な関わりは、腰痛の予防、啓発として有用な可能性がある。近年社会的に注目されている人的資本経営などの観点からも、重要な社会的意義を有すると推察される。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本活動は安全面に配慮して実施し、活動内容およびアンケートの結果は、個人および店舗が特定されない範囲で関連学会や学術雑誌などに公表されることがある旨を書面、口頭にて説明し同意を得た。</p>

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