地域在住高齢者の社会的孤立は嚥下機能と関係する:横断的観察研究

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>近年,オーラルフレイルと呼ばれる口腔機能の低下が高齢者の健康を規定する要因の一つとして着目されている.オーラルフレイルは身体的フレイルに影響するが,身体的フレイルに対しては社会的側面にも影響を及ぼす.一方,オーラルフレイルとフレイルの社会的側面との関係については報告が乏しい.本研究の目的は,地域在住高齢者における口腔機能とフレイルの社会的側面との関係を横断的観察研究にて明らかにすることとした. </p><p>【方法】</p><p>2019年から2023年に体力測定会へ参加した地域在住高齢者の中で口腔機能評価が実施できた238名 (女性168名, 平均年齢74.0歳)を解析対象とした.口腔機能の評価には,舌圧および嚥下機能のスクリーニングであるEating Assessment Tool-10 (EAT-10)と反復唾液嚥下テスト (RSST)を実施した.先行研究に基づき,舌圧は30kPa未満,EAT-10は3点以上,RSSTは3回未満をそれぞれ口腔機能低下と定義とした.フレイルの社会的側面は,構成要素の一つである社会的孤立について Lubben social network scale-6を使用して評価し,12点以下を社会的孤立と定義した.また交絡要因として,運動機能,認知機能,年齢,性別,抑うつ (5項目Geriatric depression scale),老研式活動能力指標も調査した.運動機能は5m快適歩行速度,認知機能はTrail making test part Aおよびpart Bを評価した.社会的孤立と口腔機能との関係は,本研究では口腔機能低下が社会的側面に影響を与えると仮説をたて,従属変数を社会的孤立の有無,独立変数を口腔機能とし,交絡因子で調整したロジスティック回帰分析にて検証した.なお統計学的有意水準は5 %とした. </p><p>【結果】</p><p>口腔機能低下の割合は,舌圧低下33%,EAT-10低下 13%,RSST低下6%であった.また社会的孤立にある対象者 (社会的孤立群)は21%であった.社会的孤立と口腔機能との関連では,社会的孤立群は非孤立群と比較してEAT-10の低下者の割合が有意に多かった.一方,社会的孤立と舌圧,RSSTの間に有意な関連はなかった.ロジスティック回帰分析にて交絡因子で調整しても,EAT-10の低下は社会的孤立と有意に関連した (オッズ比=2.8, 95%信頼区間1.1‒7.0, C統計量=0.80). </p><p>【結語】</p><p>地域在住高齢者において,嚥下機能の低下が社会的孤立と関係した.嚥下機能の低下は低栄養により身体的フレイルに影響すると考えられるが,社会的な側面にも影響する可能性を考慮する必要がある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した (承認番号2018-008B-2).また全対象者に対して書面にて研究参加に関する同意を得た.</p>

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