コロナ禍において趣味も地域活動も実施していないことはフレイルステータスの悪化に関連する

DOI
  • 広瀬 環
    国際医療福祉大学 保健医療学部理学療法学科
  • 沢谷 洋平
    国際医療福祉大学 保健医療学部理学療法学科
  • 石坂 正大
    国際医療福祉大学 保健医療学部理学療法学科
  • 橋本 奈織
    大田原市 保健福祉部高齢者幸福課
  • 久保 晃
    国際医療福祉大学 小田原保健医療学部理学療法学科
  • 浦野 友彦
    国際医療福祉大学 医学部老年病学講座

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>コロナ禍における新規フレイル発生にベースラインで“地域活動をしていない”が関連していることを明らかにした (Hirose, Geriatr Gerontol Int 2022)。本研究では、コロナ禍のフレイル悪化に関連する要因を趣味および地域活動の継続性の観点から明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>本研究は2年間の前向きコホート研究である。2020年の5月~ 6月に栃木県A市在住の70歳と75歳の高齢者全数を対象に開始された先行調査の716名を対象に、2022年に追跡調査を実施した。各年に基本チェックリスト (KCL)と2020年と2022年の趣味・地域活動の実施状況について郵送法によるアンケートを実施した。未返信者、辞退者、データ欠損者、認知症、 COVID-19感染者を除く549名を解析対象とした。KCLの総得点から、0~3点をロバスト、4~7点をプレフレイル、8点以上をフレイルと判定した。本研究では、2020年および2022年ともにフレイル該当者と2020年にロバストまたはプレフレイルで 2022年に1段階以上フレイルステータスが悪化した者をフレイル・悪化群とし、それ以外を非悪化群とした。また、2020年と2022年の趣味および地域活動の実施状況を、①どちらも継続、②趣味のみ継続、③地域活動のみ継続、④どちらかを単年で実施、⑤どちらも未実施、に分類した。統計解析は、フレイル・悪化群と非悪化群における性別、年齢、独居、趣味・地域活動の実施状況をカイ二乗検定、身長、体重、BMIを対応のない検定にて比較した。また、従属変数を2020年から2022年にかけてのフレイルステータス悪化、独立変数を2020年と2022年の趣味および地域活動の実施状況、調整変数を年齢・性別・居住地・独居の有無とした二項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>フレイル・悪化群133名 (24.2%)、非悪化群416名 (75.8%)であった。群間比較では、年齢 (p=0.021)、⑤どちらも未実施 (p=0.004)で有意差を認めた。二項ロジスティック回帰分析の結果、フレイル・悪化群に関連する要因に、⑤どちらも未実施 (オッズ比=2.31、95%信頼区間=1.157-4.608、β=0.353、 p=0.018)が抽出された。</p><p>【考察】</p><p>従来の生活において趣味や地域活動等の社会参加の実施はフレイル発症リスクや障害予防につながるとされている。コロナ禍におけるフレイル悪化の対策には、趣味や地域活動といった社会参加を“少しでも”実施することが重要であることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究の実施にあたり、全対象者にアンケートに関する説明と回答をもって本研究への参加同意になる旨の説明を書面にて 行った。本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て行い (承認番号:21-Io-38-2、22-Io-25)、ヘルシンキ宣言のガイドラインに基づいて実施した。</p>

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