スマートフォンアプリによる日常生活における歩行速度と摂取食品数の評価

DOI
  • 河合 恒
    東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム
  • 今村 慶吾
    東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム
  • 江尻 愛美
    東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム
  • 解良 武士
    東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム 高崎健康福祉大学 保健医療学部理学療法学科
  • 大渕 修一
    東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>歩行速度や食品摂取多様性はフレイルに関連する重要な指標である。近年、これらの指標はスマートフォンアプリ等で日常生活中に測定できるようになったが、日常生活中に測定したデータの健康状態との関連や長期的変化に関する報告は少ない。本研究ではスマートフォンアプリによって日常生活中の歩行速度(DWS)と摂取食品数を約30か月間測定しフレイルとの関連や長期的変化について検討した。 </p><p>【方法】</p><p>民間企業の60歳以上の顧客を対象に案内を送付し、スマートフォンアプリによる健康モニタリングサービスの実証実 験の参加者を募った。DWSはスマートフォン内蔵GPSとステップカウンタから自動的に測定した。摂取食品数は食品摂取多様性スコアの10項目の食品群から1日に摂取した食品数を入力し てもらった。データ収集は2020年8月~2022年12月の期間に行った。基本チェックリストに回答し、日々のデータが1日でも測定できた180名(平均年齢(SD): 72.3(6.6)歳)を分析対象とし、基本チェックリストに基づき、健常とプレフレイル・フレイルに群分けした。日々のデータは3か月ごとの平均値を求め、日々のデータを従属変数、群と時間を固定効果、個人と時間を変量効果とした線形混合モデルによって日々のデータの変化を検討した。 </p><p>【結果】</p><p>分析対象者は健常67名、プレフレイル81名、フレイル32名であった。DWSの最初の3か月の各群の平均は健常 1.27m/s、プレフレイル・フレイル1.24m/sで、群、時間の主効果、群と時間の交互作用はいずれも統計的に有意ではなかった。摂取食品数の最初の3か月の平均は健常6.6、プレフレイル ・フレイル6.2に対して、最後の3か月の平均はそれぞれ8.3、 7.8で、有意な時間の主効果を認めた(P<0.001)が交互作用は認めなかった。 </p><p>【考察】</p><p>DWSは健常、プレフレイル・フレイルともに期間を通して変化がなく維持されていた。プレフレイル・フレイルでは時間とともにDWSが低下することも予想されたが、そのような傾向は見られなかった。アプリを継続して使用できた者は健康意識が高いと考えられるが、アプリの使用が歩行能力の維持をもたらした可能性もある。摂取食品数は健常、プレフレイル・フレイルともに6種類から8種類へ増加した。アプリの使用を契機に食習慣を改善させた者がいたことが示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は東京都健康長寿医療センター研究部門倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号: 2020-5)。参加希望者は実証実験の案内状に印刷されたQRコードから自身のスマートフォンで研究の説明文書が記載されたアプリのダウンロードサイトにアクセスし、研究参加に同意した上でアプリをダウンロードして使用した。</p>

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