メディカルフィットネスを利用し、重度化防止のために自立を支援した脳卒中の一症例

DOI
  • 鈴木 章紘
    浜松市リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 山下 徹
    浜松市リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 森下 一幸
    浜松市リハビリテーション病院 事務部
  • 池谷 正和
    浜松市リハビリテーション病院 事務部
  • 池田 孝行
    聖隷予防検診センター 保険事業部
  • 松本 武士
    浜松市リハビリテーション病院 リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 介護保険事業状況報告の概要によると、要介護認定者数は 667.4万人となり、2000年の218万人から20年で3倍に増加している。特に脳卒中は、厚生労働省国民生活基礎調査の要介護になった理由の16.1%であり、第二位である。近年では、地域包括ケアの理念に基づき、生活期脳卒中患者に対して重度化防止・介護予防を促進しているが、リハビリテーション (以下:リハ)における個別訓練時間は十分に保障されておらず、患者自身の自立心に依存している。当院では2021年から保険外事業として理学療法士によるメディカルフィットネス (以下: MF)を行っている。MFは運動療法施設として疾病予防効果が期待されているが、要介護者における介入報告はない。今回、当院のMFにて、生活期脳血管疾患者に関わる機会を得た。今回の症例報告を通して、要介護者に対するMFの運動療法の有効性について検討する。 </p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は60代男性、右脳出血、要介護3、発症から3年経過。MF の利用目的は歩行能力の改善とADL動作の介助量軽減であった。 </p><p>【経過・結果】</p><p> アウトカムについて、生活の質はEQ5D5L、歩行能力は10m歩行速度(10mwt)、gait efficacy scale(GES)、日常生活は Functional Independence Measure運動項目 (FIM-M)、 life-space assessment(LSA)、modified Rankin Scale (mRS)を用いた。 EQ5d5lが0.52、10mwtは0.286m/s、GESは42点、 FIM-Mは37点、LSAは12点、mRSは4であった。介入期間は12ヶ月、頻度は約1回/週(計24時間)であった。介入は機能訓練から開始し、家族指導や自主練習の量を増加し、活動量増加を支援した。結果は、EQ5d5lが0.845、10mwtは0.4m/s、GESは 59点、FIM-Mは80点、LSAは69点、mRSは2であった。 </p><p>【考察】</p><p> 先行研究と比較するとQOLは生活期脳卒中患者の平均値に近い 値となり、介入前後で有意な改善があった。歩行では、臨床的に有意な改善は得られなかったものの、介助下で生活範囲が拡大できる可能性があった。そのため、活動量の増加と生活範囲の拡大による運動量の増加を図った。それに伴い、自己効力感、 ADL、生活範囲に有意な改善があった。以上から、MFにおけ る個別指導の運動療法は有効性があると考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本発表に際し、当院倫理委員会にて審査・承認を得た。</p>

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