骨粗鬆症検診における骨密度に影響を及ぼす因子の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 我が国での骨粗鬆症の推定患者は1280万人ともいわれており、早期発見のためにも各自治体での検診事業は重要な役割を担っている。2020年において各都道府県の骨粗鬆症検診率は4.5%となっている。また、地域によっての検診率にはばらつきがみられ、検診の方法等も詳細は自治体ごとの判断に委ねられている状態である。このことから検診率の向上を図り、骨密度低下者の早期発見のためには、より簡便かつ一般化できる方法を検討していく必要があると考える。本研究では幸手市の骨粗鬆症検診受診者を対象とした各身体計測結果をもとに、骨密度を予測する要因を明らかにすることとした。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は2018年度・2019年度に幸手市の骨粗鬆症検診に参加し、全項目の測定を実施した地域在住者1774名(男性337名、女性 1437名)、平均年齢68.2±8.19歳である。身体障害及び、要支 援・要介護認定を受けている者を本研究の対象より除外した。測定項目として、骨密度、握力、歩行速度、補正四肢筋肉量 (SMI)、body mass index(BMI)、fracture risk assessment tool(FRAX)の測定を行った。骨密度測定は橈骨遠位部での二重エネルギーX線吸収法(DXA)で実施した。SMI測定には生体電気インピーダンス法による体組成計測を実施した (MC-780A-N,タニタ製)。歩行速度は快適歩行速度条件での10m歩行時間を測定し算出した。統計解析は、骨密度を従属変数、握力、歩行速度、SMI、BMI、FRAXを独立変数とし、重回帰分析 (Stepwise法)を実施した。なお、有意水準は5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p> 重回帰分析により、握力(β=0.371、p<0.001)、FRAX(β =-0.217、p<0.001)、SMI(β=0.384、p<0.001)、BMI(β =-0.206、p<0.001)、歩行速度(β=-0.044、p=0.012)が抽出された。自由度調整済み決定係数(R2)は、0.476であった。回帰式はy=0.314+0.006×握力-0.003×FRAX+0.043×SMI-0.007× BMI-0.020×歩行速度と算出された。 </p><p>【考察】</p><p> 骨粗鬆症検診実施者に対して、握力、FRAX、SMI、BMI、歩行速度が骨密度を予測する要因として示唆された。FRAXや身体機能の測定が、骨粗鬆症検診において骨密度を一般的かつ簡便に予測するのに有用であり、臨床判断に役立つ指標になると考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は、ヘルシンキ宣言を遵守し、日本保健医療大学研究倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号P3001)。対象者には研究依頼書に基づき、本研究の目的・意義及び方法、対象者の利益・不利益、個人情報保護についての説明を行った。書面にて同意を得た後、調査を実施した。</p>

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