地域在住高齢者における骨質と身体活動の関連性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 骨強度は、骨粗鬆症及び骨折に関連する因子として知られ、骨 密度と骨質により規定される。骨質は、骨の材料の質である材質特性と、その材料から構築される構造特性により定義される。近年では、骨強度に影響を与える因子が骨密度であるという考え方を改め、骨質の役割に新たな注目が集まっている。骨密度はすでに多数の因子との関連が示され、特に身体活動との関連が報告されている。一方で、骨質は臨床的に評価できる方法が限られているため、関連する因子を検討した報告は少なく、身体活動との関連は明らかにされていない。そこで本研究では、骨質の要素の一つである皮質骨の「微細構造」や「石灰化」を反映するとされる指標を用いて、骨質と身体活動の関連を明らかにすることを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 本研究は65歳以上の地域在住高齢者を対象とした横断研究であ る。主要評価項目は骨質を反映するcortical Speed of Sound (cSOS)とし、副次評価項目は骨密度を反映するSpeed of Sound (SOS)とした。cSOSは超音波皮質骨音速測定装置 (古野電気社) を用い、SOSは超音波骨密度測定装置 (CM-200、古野電気社)を用いて測定した。身体活動量はリストバンド型加速度計 (ActiBand,TDK社)を用いて2週間評価した。統計解析として、骨質、骨密度それぞれと身体活動の関連を調べるために、cSOS、 SOSそれぞれを従属変数、身体活動量 (LPA、MVPA)を独立変数として重回帰分析を行った。調整変数は年齢、BMI、栄養素摂取量 (カルシウム、ビタミンD、ビタミンK)、服薬数、疾患 (腎臓病、糖尿病)とした。 </p><p>【結果】</p><p> 単変量の相関分析を行った結果、男女ともにcSOSと身体活動との間に有意な関連は観察されなかった。さらに、交絡因子を考慮して重回帰分析を行った結果においても、男女ともにcSOSは身体活動と関連を示さなかった。SOSについても同様の結果を示した。 </p><p>【考察】</p><p> 本研究では、骨質の指標としてのcSOSは男女共に身体活動量と関連がないことが示された。これらの結果より、地域在住高齢者を対象とした場合、高い身体活動が骨質の維持・増大に必ずしも繋がるわけではないことが示唆された。今後、骨質と身体活動のより詳細な関連を明らかにするために、縦断的手法を用いたさらなる研究が必要である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 兵庫医科大学倫理審査委員会の承認を受けて実施した。対象者には文書と口頭で研究の説明を行い、書面にて参加の同意を得た。</p>

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