有料老人ホームにおけるStanding test for Imbalance and Disequilibrium(SIDE)を用いた転倒予防策の検討

DOI
  • 大和 諭志
    株式会社ハイメディック シニアライフ東日本運営部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>高齢者の転倒は、特に長期療養環境では健 康上の大きな負担となる。介護現場において投入できる人的及び物的資源は限られており、転倒危険度の高い対象者を重点的に管理する必要がある。しかし、ケアスタッフは医療専門職に比べて予測精度が低く、適切な管理が難しかった。そこで、長期療養の介護現場でも簡便に実施できるStanding test for Imbalance and Disequilibrium(以下SIDE)による評価とその結果から対策を共有する方法が転倒予防に有用かどうかを検討した。 </p><p>【方法】</p><p>本研究は東京都杉並区の有料老人ホーム (定員55名)で実施した。SIDEを活用した転倒予防施策の導入準備として 2021年12月にケアスタッフを含む職員に対して評価方法と Levelごとの管理方法について勉強会を実施した。安全管理の観点から理学療法士が入居者の評価を実施し、2022年1月1日ケアスタッフにSIDE Levelと対策を記載した紙面を配布した。紙面配布による転倒予防効果の検証として前後6ヶ月間の転倒事例を比較検討した。 </p><p>【結果】</p><p>SIDEによる評価を導入する以前の6ヶ月間に施設内で発生した転倒事例は35件であった。そのうちマニュアルに沿った対応が取れていなかった事例は11件であった。一方で、 SIDEによる評価を導入し、対策の共有を図ってから6ヶ月間に施設内で発生した転倒事例は24件であった。そのうちマニュアルに沿った対応が取れていなかった事例は4件であった。転倒の発生件数は減少し、マニュアルに沿った対応が取れていなかった事例は14.8%減少した。 </p><p>【考察】</p><p>今回の結果から、本研究を実施した施設ではSIDEを用いた転倒予防策により転倒件数が減少しており、一定の効果が確認できた。SIDEは人的及び物的資源が限られた介護現場において簡便に評価ができて、ケアスタッフにとっても理解しやすいことが有用であったと考える。転倒の要因は多くの要因が関係していることがわかっており、今後は認知 (メタ認知)の側面も含めた対策でより有効な転倒予防策につなげていきたい。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は株式会社ハイメディックの倫理委員会から承認を得て行った。調査内容の結果から個人が特定できないように配慮した。対象者およびご家族に対して研究目的や方法、調査結果は研究目的以外に使用しない事を説明し、承諾を得て実施した。</p>

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