体組成がフレイルに与える影響:システマティックレビュー

DOI
  • 濱田 和明
    広島大学大学院 人間社会科学研究科 和光整形外科クリニック 通所リハビリテーション部門
  • 光武 翼
    広島大学大学院 人間社会科学研究科 福岡国際医療福祉大学 医療学部理学療法学科
  • 堀 智成
    広島大学大学院 人間社会科学研究科 福山リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 岩本 義隆
    広島大学病院 診療支援部リハビリテーション部門
  • 出口 直樹
    広島大学大学院 人間社会科学研究科 東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 猪村 剛史
    広島大学大学院 人間社会科学研究科 広島都市学園大学 健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 田中 亮
    広島大学大学院 人間社会科学研究科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>フレイルは世界規模で認められる健康上の問題とされ,過体重と低体重がリスクファクターの一つとされている.しかし,体重に直接影響する体組成とフレイルの関連は明らかでない.本研究では,筋,脂肪,骨,体水分等の体組成がフレイルのリスクファクターとなるか検証した. </p><p>【方法】</p><p>MEDLINE,Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature,Scopusを用いて検索し(最終検索日:2022年06月03日),体組成とフレイルの関連を報告したコホート研究または横断研究を抽出した.研究デザイン,参加者,体組成に関連した暴露因子,フレイルに関連したアウトカム,統計手法,結果に関するデータを収集し,系統的にレビューした.取り込み基準を満たしたコホート研究について,Cochrane risk-of-bias instrument を用いリスクオブバイアス(RoB)評価を行った. </p><p>【結果】</p><p>3871件の研究が検索され,7件のコホート研究を含む 77件が取り込まれた.各コホート研究のRoB評価では,全ての研究が少なくとも一つの懸念を有した.コホート研究では,低除脂肪量,腹囲で定義される腹部肥満,転倒等による骨折の既往がある参加者の骨密度Tスコアが,フレイルと有意に関連した.体脂肪率で定義される肥満,腹囲(連続変数),転倒等による骨折の既往のない参加者のTスコアは,フレイルと有意な関連を認めなかった.多変量解析を行った横断研究では,下肢筋量は一貫してフレイルと有意に関連したが,上肢筋量との関連について結果は一貫しなかった.コホート研究と同様に腹部肥満はフレイルと有意に関連した.骨に関連した曝露因子の結果は一貫性が認められなかった.体水分に関連した暴露因子はフレイルと有意に関連した. </p><p>【考察】</p><p>本研究の結果から,除脂肪量,特に下肢筋量の低下と腹部肥満は,フレイルの危険因子となる可能性が高いことが示された.フレイルの診断基準に身体活動量が含まれており,下肢筋量と身体活動量には有意な関連があるため,下肢筋量は上肢筋量よりフレイルへの影響が強いことが推察される.また,腹部肥満の概念を含むメタボリックシンドロームはフレイルの構成要素である身体活動量等と有意な関連が示されており,本研究の結果と矛盾は認められなかった.これらの結果は,フレイル予防策の開発に有用であると同時に,個人による質の高い健康管理に貢献できる可能性がある.</p>

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