東日本大震災地域の通いの場に参加する高齢者における社会的つながりと心理社会的な変化との関連

DOI
  • 藤原 和志
    ロッツ株式会社 リハ特化型訪問看護ステーションさんぽ 武蔵小杉
  • 中村 邦人
    ロッツ株式会社 リハ特化型訪問看護ステーションさんぽ 陸前高田本店
  • 小野寺 新
    ロッツ株式会社 リハ特化型訪問看護ステーションさんぽ 陸前高田本店
  • 青木 拓也
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 木村 祐紀
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 佐藤 亘
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 西田 翔
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 宮澤 明義
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 寺尾 友佑
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科
  • 山田 実
    筑波大学 人間系

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 震災地域の高齢者は、震災に伴う転居の影響などにより社会的孤立に陥りやすい。社会的孤立の解消には、通いの場などの地域活動への参加が重要であるが、震災地域の通いの場に関する報告は少ない。本研究では、通いの場への参加による心身・社会機能に対する影響を調査し、震災により転居を強いられた高齢者とそうでない高齢者との相違点を探索した。 </p><p>【方法】</p><p> 本研究は横断研究である。対象は、岩手県の3市町村で実施されている通いの場に参加した地域在住高齢者とし、震災を理由に転居した者を「転居者」、転居していない者を「非転居者」とした。メインアウトカムは、通いの場に参加しての心理社会的な変化とし、全8項目を全くない (0点)~とてもある (10点) の11件法で調査した。統計解析は、従属変数に通いの場に参加しての心理社会的な変化に関する各項目、独立変数に社会的つながり (LSNS-6、ソーシャルサポート)、調整変数に年齢、性別などを投入したロジスティック回帰分析 (強制投入法)を実施した。この解析を転居者、非転居者に層別化して実施することで転居による影響を検証した。 </p><p>【結果】</p><p> 解析対象者は150名 (年齢79.2±6.3歳)であった。ロジスティック回帰分析の結果 (Odds Ratio、p値)、LSNS-6が有意に関連した心理社会的な変化は、転居者において、住んでいる地域への愛着に繋がった (OR: 7.37、p=0.021)、他の地域活動への興味・関心が湧いた (OR: 4.07、p=0.046)であった。同様に、非転居者では、日常的に運動するきっかけができた (OR: 4.72、p =0.019)、他の地域活動への興味・関心が湧いた (OR: 3.84、p =0.045)であった。ソーシャルサポートが有意に関連した心理社会的な変化は、転居者において、日常的に運動するきっかけができた (OR: 5.82、p=0.036)、住んでいる地域への愛着に繋がった (OR: 4.98、p=0.049)、他の地域活動への興味・関心が湧いた (OR: 4.98、p=0.031)であり、非転居者においては、全項目において有意な関連性を認めなかった。 </p><p>【結語】</p><p> 通いの場への参加による心身・社会機能に対する影響は、転居者と非転居者において共通した部分と相違した部分が認められた。転居者においては、通いの場が震災後のコミュニティ再構築を促進する役割を担っている可能性が示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、筑波大学人間系研究倫理東京地区委員会の承認を得て実施した (承認番号 :第東 2021-116号)。また対象者には、本研究の趣旨を説明し署名にて同意を得た。</p>

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