介護老人保健施設入所者における身体活動量に関連する因子の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 近年、健康な高齢者だけでなく要介護高齢者に対しても身体活動の促進が介護予防の観点から推奨されている。要介護高齢者の身体活動量に関連する因子を明らかにし、身体活動促進に対する方策を検討することが重要であるが、先行研究の多くは対象が地域在住の高齢者などと限定的であり、介護老人保健施設 (老健)の入所者を対象に身体活動量の関連する因子を検討した研究はほとんど見当たらない。さらに老健入所者においては、栄養不良や認知機能の低下に伴い意欲や発動性低下を生じていることが多く、身体活動量の関連には十分な検討をする必要があると考えられる。 そのため、本研究は老健入所者の身体活動量に関連する因子を検討することを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 2022年11月から2023年1月に当老健へ入所し家族の同意が得られた老健入所者46名を対象として横断的調査を実施した。調査項目は基本情報として、性別、年齢、介護度、Body Mass Index (BMI)を調査した。身体活動量に関連する因子として、要介護者の動作能力評価であるBedside Mobility Scale (BMS)、高齢者の栄養スクリーニングツールであるMini Nutritional Assessment®-Short Form (MNA®-SF)、虚弱高齢者の日常生活動作に関する意欲の評価であるVitality Index (VI)を評価した。身体活動量は、活動量計 (Active Style Pro HJA-750C)を用いて活動強度別時間 (座位行動:1.5METs以下、軽強度活動:1.6~ 2.9METs)を測定した。なお、活動量計は入浴時を除いて装着 し24時間の解析を行った。 統計解析は、関連する因子を明らかにするため活動強度別時間を従属変数、BMS、MNA®-SF、VI、年齢を独立変数とした重回帰分析を行った。解析はEZR version4.2.2を使用し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 対象者の内訳は女性36名(78%)、平均年齢86.0±7.4歳であった。重回帰分析の結果、座位行動において有意な関連を認めた要因は無かった (R2= -0.01)。軽強度活動においてBMS (β= 24.397、p=0.021)とMNA®-SF (β=- 32.118、p<0.001)が有意 な関連を認めた (R2=0.307)。 </p><p>【考察】</p><p> 座位行動において関連する要因はなかったが、軽強度活動においてBMS、MNA®-SFが独立して有意に関連することが明らかとなった。今後は、老健入所者における経時的な動作能力や栄養状態と身体活動量を調査し、要介護高齢者に対する身体活促進の介入方法を検討する必要がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究はウエルハウス協和内の倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号:2022-1)。また、ヘルシンキ宣言に従っ て、対象者および家族に研究の趣旨や方法、倫理的配慮(予測される参加者の利益と不利益、プライバシーの保護、情報の開示、同意撤回時の対応と不利益を生じないこと)について説明を行い、家族から同意を得た 。</p>

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