ロコモ健診を受診した高齢者における身体機能の経時的変化

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> ロコモティブシンドローム (以下、ロコモ)が進行すると要介護 のリスクが高まり、高齢者の運動機能の低下、サルコペニアや骨粗鬆症などの運動器疾患との関連が報告されている。当院ではロコモ予防を目的に健診者の身体機能を評価し、個別の運動指導を行うロコモ健診を実施している。ロコモ予防に対する運動療法の効果は多くの先行研究があるが、人間ドックの健診で介入を行なっている施設は少なく、その効果判定をした報告も少ないのが現状である。そこで、本研究の目的はロコモ健診を受診した高齢者の身体機能の経時的変化を検討することとした。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は1回目健診受診時の年齢が65歳以上とし、2019年6月 から2023年3月の間に3年連続でロコモ健診を受診した男性 45例、女性14例とした。身体機能因子として、2ステップテスト、下肢筋力、握力、骨格筋量指数 (以下、SMI)、BMI、大腿骨骨密度、HbA1c、中性脂肪、血清アルブミン値 (以下、Alb)を測定した。統計学的解析は男女に区別した後、それぞれで反復測定分散分析を用いて1回目、2回目、3回目の身体機能の比較を実施した。その結果、有意差を認めた項目に対して多重比較を実施した。これら全ての検定は有意水準5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p> 女性は全ての項目で有意差を認めなかった。男性は下肢筋力において初回 (1.71±0.37N m/kg)に対して、3回目 (1.62± 0.39Nm/kg)が有意に低下していた。また握力は1回目 (36.0± 5.0kg)に対して3回目 (34.8±5.1kg)が低下していた。 </p><p>【考察】</p><p> ロコモ健診受診者の身体機能の経時的変化を検討した結果、男 性の下肢筋力、握力で低下を認めた。一般的に加齢とともに、身体機能の低下は起こるが、ロコモに対する運動療法にて高齢者の身体機能の向上を認めたとする報告は多数存在する。それらの多くが、2~6ヶ月程度の継続的なフォローを実施している。本研究は人間ドックに附随する介入であり、1年に1回のみのフォローとなっている。個別の運動指導を実施しているが、実際の実施頻度は調査できておらず、定期的な介入もないことから運動の効果が得られにくかったものと思われる。以上より、身体機能の維持・向上を目的に人間ドックのみでなく、定期的に受診できる環境を整備し、運動の継続を促す対策が必要と考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 当院臨床研究審査委員会の承認(承認番号:4120)を受け、ヘルシンキ宣言および臨床研究に関する倫理指針を遵守して実施した。</p>

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