骨粗鬆症による骨折予防~超音波画像を用いた四肢骨格筋量を予測する取り組みの紹介~

DOI
  • 湯口 聡
    日本保健医療大学 保健医療学部 理学療法学科
  • 旭 竜馬
    日本保健医療大学 保健医療学部 理学療法学科

抄録

<p>骨粗鬆症による骨折予防の一つとして、身体機能や四肢骨格筋 量の維持・向上は重要である。特に、四肢骨格筋量の低下は近年のリハビリテーション分野において、サルコペニアへの対策の観点から重要な課題である。Asia Working Group for Sarcopenia 2019 (AWGS2019)では、Dual-energy X-ray absorptiometry (DXA)やBioelectrical impedance analysis (BIA) による四肢骨格筋量の評価を行うことを推奨している。しかし、放射線による侵襲やペースメーカーなどの金属挿入がある場合にはそれらの検査が困難となる場合がある。また、簡便なスクリーニングとして下腿周径を用いることも推奨されているが、浮腫がある場合では妥当性が低下することが指摘されている。 しかし近年、超音波画像を用いた研究が増えてきており、その簡便性や非侵襲性から臨床応用が進みつつある。European consensus on definition and diagnosis 2 (EWGSOP2) は超音波画像による骨格筋の評価について、臨床応用するには十分な根拠が得られていないが、今後新しい評価方法となる可能性があると言及している。そこで、臨床応用への基礎研究として腓腹筋の筋厚を超音波画像によって計測し、全身骨格筋量との関連を検討したので、今まで得られた知見を含めて紹介したい。 地域在住の65歳以上の195人 (平均年齢72.4±4.3y、男性 n=72歳)を対象とした。四肢筋質量指数 (SMI)はBIAを用いて測定し、超音波画像 (ビューズ・アイ,酒井医療株式会社,大阪)に よって腓腹筋の筋厚を測定した。SMIが男性は<<7.0 kg/m²、女性は<<5.7 kg/m²を全身骨格筋量低下とし、低下を認めるものをSMI低下群、認めないものを健常群と定義し分類した。 SMI低下と腓腹筋の筋厚の関連を年齢、性別、体格指数 (BMI)、身体機能および補正筋輝度で調整したロジスティック回帰分析によって分析した。また、SMI低下を示す腓腹筋の筋厚のカットオフ値を、ROC曲線により求めた。 SMI低下群は16.9% (n=33)であった。ロジスティック回帰分析の結果、腓腹筋の筋厚はSMI低下と独立して関連しており、腓腹筋の筋厚のカットオフ値は<11.6mm(AUC: 0.83, 感度: 0.83,特異度: 0.73, p<0.01)であった。 超音波画像による腓腹筋の筋厚はSMIと関連しており、全身骨格筋量の低下を示すカットオフ値は全身骨格筋の低下を評価する代替指標になりうる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>日本保健医療大学倫理委員会にて承認 (承認番号:3001)を得ている。</p>

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