フレイル患者におけるocciput-to-wall distance(OWD)との関連について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 日本では少子高齢化が急速に進んでおり、社会保障制度の持続可能性が課題となっている。その対策として高齢者の生活の質を維持することが重要であり、その1つにフレイルの予防が挙げられている。我々は第41回関東甲信越ブロック理学療法士学会において、当院入院患者のフレイル有り群とフレイル無し群においてocciput-to-wall distance(以下OWD)に有意差を認めたことを報告した。臨床現場や地域社会では簡便で再現性のある評価が求められている。また患者や利用者に対しても身体的負荷が少なく、分かりやすい評価が有用であると考えられる。したがって、本研究ではフレイル患者に対するOWDのカットオフ値を抽出することを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 2021年4月から2021年9月に当院に入院した103名(平均年齢 75.8±11.6歳)を対象とした(整形外科患者27名、内科患者20名、外科患者22名、脳外科患者34名)。フレイルの有無は日本版フ レイル基準に則り、評価項目の3項目以上該当した患者をフレイルと判定した。除外対象はJapan Coma ScaleがⅠ-2以下の患者、OWDの計測が禁忌または疼痛を伴う患者、歩行が困難な患者、立位保持が困難な患者、下肢に荷重制限がある患者とした。OWDのカットオフ値検討では、受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic:ROC)曲線におけるYounden指標を用いて抽出した。 </p><p>【結果】</p><p> 当院入院患者のフレイル群におけるOWDのカットオフ値は 3.0cm(ROC曲線下面積0.756、感度86.0%、特異度58.7%)となった。 </p><p>【考察】</p><p> 先行研究では地域在住の健常高齢者を対象にOWDを計測したところ、カットオフ値5.0cm以上で痛みの有無や転倒不安感の有無、歩行速度の減少を判別できた事が報告されている。今回の研究ではカットオフ値3.0cmでフレイルの可能性が高いことが明らかとなった。体幹筋に関する報告では、高齢自立群と高齢介助群での比較で、腹横筋などの体幹深部筋に加えて抗重力筋である脊柱起立筋に萎縮を認めた事が報告されている。本研究の対象は入院患者であり、長期臥床などによる活動性の低下からフレイル群では脊柱起立筋などの抗重力筋に筋力低下を生じ、円背を呈しやすい可能性が示唆された。本研究の限界は、フレイルに関する他の要因との関連を検討できておらず、ロジスティク回帰分析などによる再調査が必要である。 </p><p>【結論】</p><p> フレイル患者は円背を呈しやすい可能性があり、OWDのカットオフ値は3.0cmであった。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院の調査研究委員会の承諾を得て、患者本人の承諾を得て実施した。</p>

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