回復期リハビリテーション病院における脳卒中患者の退院時サルコペニア関連評価の比較

DOI
  • 吉田 優斗
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 福澤 純
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 小池 将
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 仲村 歩華
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 三澤 慎
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 姫野 蒼大
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 原井 瑛広
    赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科 東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室
  • 大渕 修一
    東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 脳卒中発症後に併発する脳卒中関連サルコペニアは,有症率が 42.0%と言われている.サルコペニアのスクリーニングについて ,Yiらは地域高齢者において,下腿周径(CC)が最も感度・特異度が優れていたと報告している.脳卒中患者においては必ずしもCCが優れているとは言えないと報告されており,疾患別にスクリーニングを検討する必要性が指摘されている.2019年のAsian Working Group for Sarcopeniaの診断基準(AWGS2019)では,身体機能・筋力評価によるサルコペニアの可能性の判断も想定されている.しかし,脳卒中患者を対象に身体機能・筋力評価を含めたスクリーニング精度の比較はされていない.そこで,本研究では脳卒中関連サルコペニアのスクリーニングとして,握力,5回椅子立ち上がりテスト(5CST),CC,Short Physical Performance Battery(SPPB)の感度・特異度を明らかにすることを目的とした. </p><p>【方法】</p><p> 対象は,当院入院中の脳卒中患者とし,認知機能低下により指示の理解が得られない者,神経筋,整形疾患を有する者,体内にペースメーカーまたは金属を有する者は除外した.非麻痺側握力,6m快適歩行速度,Skeletal Muscle mass Index(SMI)がすべて評価可能だった者18名を解析対象とし, AWGS2019に基いてサルコペニア群,非サルコペニア群に分類した.SMIの測定には,医療用体組成計seca(seca株式会社,千葉)を用いた.サルコペニアの判定を外的基準とし,非麻痺側握力,5CST,非麻痺側または麻痺側 CC,SPPBの感度・特異度を算出した.いずれの評価のカットオフ値はAWGS2019の基準に準じた.感度・特異度の算出には,統計解析ソフトRを使用した. </p><p>【結果】</p><p> 3名(16.7%,すべて女性)がサルコペニアと判定された.サルコペニアの判定に対する各評価の感度/特異度(%)は,非麻痺側握力 :100.0/46.7,5CST:66.7/35.7,麻痺側CC:100.0/40.0,非麻痺側 CC:100.0/53.3,SPPB:33.3/66.7であった. </p><p>【考察】</p><p> 5CST,SPPBと比較し,非麻痺側握力,CCが高い感度を示した.いずれの評価も特異度が低く,判定が偽陽性となる可能性があることが示唆された.井上らは,脳卒中患者のサルコペニア評価として ,CCは本研究と同様の結果を示している.また,上島らは,握力 ,5CSTなどの身体機能評価単独では,感度が低下し,組み合わせることで感度が向上したと報告している.脳卒中関連サルコペニアのスクリーニングにおいても,筋力・身体機能評価を組み合わせることが,高い感度,特異度を示す可能性がある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は,赤羽リハビリテーション病院倫理委員会の承認 (承認番号2022B-004)を受けており,対象者に,本研究の主旨,内容,調査結果の取り扱いなどに関して文書と口頭にて十分な説明を行い,文書による同意を得て実施した.</p>

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