The Low Physical Activity Questionnaire日本語版によって血液透析患者の身体活動量の管理目標値は判別可能か

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 血液透析(HD)患者において身体不活動は生命予後に悪影響を及ぼすことから、身体活動量の把握は疾病管理上極めて重要である。一般に、身体活動量の評価に使用される質問紙法は歩数計に比べて精度は劣るが、対象者の協力が得られやすいという利点がある。近年、HD患者に向けてthe Low Physical Activity Questionnaire (LoPAQ)が開発された(Johansen LK, 2015)。腎臓リハビリテーションガイドライン(2018)ではHD患者の疾病管理の一つとして身体活動量の目標値を4000歩/日以上としている。そこで、我々はLoPAQの開発者に承認を得たうえで LoPAQ日本語版を開発し、管理目標値である4000歩/日の判別能を検討した。 </p><p>【方法】</p><p> 260例(平均年齢69.2±11.6歳)を対象とした。調査項目は患者背景因子および身体活動量とした。活動量の評価には日本語版 LoPAQおよび歩数計を使用した。LoPAQの「総身体活動量」およびサブカテゴリ―である「歩行のみの活動量」と「座位時間 」によって、4000歩/日(非透析日平均歩数)以上か否かの判別が可能か、受信者動作特性曲線の曲線下面積(AUC)を用いて検討した。 </p><p>【結果】</p><p> LoPAQの「総身体活動量」 (AUC=0.71,95%CI:0.65-0.77)と「歩行のみの活動量」 (ACU=0.73,95%CI:0.66-0.78)による管理目標値 (4000歩/日)の判別の精度はともに中等度であり、両者の判別能には有意な差は認められなかった(P=0.60)。一方、「座位時間」による判別の精度は低値であった(AUC=0.58, 95%CI:0.51-0.65)。なお、4000歩/日以上か否かを判別するカットオフ値(感度+特異度-1が最大となる値)は「総身体活動量」では753kcal/週、「歩行のみの活動量」は245kcal/週(70分/週 )であった。 </p><p>【考察・結論】</p><p> HD患者の管理目標値である4000歩/日は質問紙に基づく LoPAQを用いて判別可能と考えられた。特にLoPAQの「総身体活動量」および「歩行のみの活動量」の判別能はともに中等度の精度を示したことから、質問項目を「歩行のみの活動量」に限定するなど簡略化も可能と考えられた。一方、「座位時間」の把握だけでは4000歩/日以上か否かを的確に捉えられない可能性が示された。 LoPAQ 日本語版はHD患者の身体活動量の管理目標値を判別するツールとして利用可能である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会(承認番号: 2016-014)の承諾を受けており、対象者には本研究の意義ならびに測定に伴う注意事項を十分に説明し、同意を得て実施し た。</p>

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