『当院呼吸器内科病棟の転倒・転落アセスメントシートの有用性』 ~入院時に転倒・転落の予測は可能か~

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抄録

<p>【背景】</p><p> 多くの病院では,日本看護協会が提示した転倒・転落アセスメントシートを改定したものを使用しており,当院においても看護師が運用を行っている.アセスメントツールは看護師が簡便に使用でき,根拠のあるリスクをスコア化してカットオフ値を定めることが望ましいとされている.当院呼吸器内科病棟では多職種で転倒予防カンファレンスを実施しているが,根拠のあるリスクのスコア化やカットオフ値が定められていないのが現状である.そのため,転倒・転落アセスメントシートの項目ごとの重み付けやスコアリングを見直すことで,臨床で運用可能な妥当性のある評価指標となるかもしれない. </p><p>【目的】</p><p> 当院呼吸器内科病棟で使用している転倒・転落アセスメントシートの有用性と入院時に転倒・転落の予測が可能か調査すること. </p><p>【方法】</p><p> 2022年4月から2022年12月までに当院呼吸器内科病棟へ入院した20歳以上の患者244例を対象とした.調査項目は診療科,当院版の転倒・転落アセスメントシート,入院中の転倒有無とし,後方視的に抽出した.統計解析は,転倒と全アセスメント項目の関連性をFisher検定またはχ2乗検定を用いて検討した.さらに有意であった項目を独立変数とし,転倒有無を従属したロジスティック回帰分析を用いて検討した.また,ROC分析を用いて,転倒・転落のカットオフ値を算出した.有意水準5%未満とした. </p><p>【結果】</p><p> 入院中に転倒・転落したのは39例であった.スクリーニングではナースコールを認識できない,ふらつきがある・立位バランスが悪い,移動や排泄に介助が必要である,杖・車椅子・歩行器を使用中である,半年以内の転倒・転落において,有意な関連を認めた (P<0.05).ロジスティック回帰分析の結果,ふらつきがある・立位バランスが悪い,半年以内の転倒・転落が独立した転倒・転落の予測因子として抽出された.さらにROC分析の結果,転倒・転落のカットオフ値 (AUC)は15点 (0.87)であった. </p><p>【考察】</p><p> 慢性呼吸不全患者において,転倒リスクは立位バランスが関与している.また,急性期病棟入院患者における転倒リスクは,転倒の既往が報告されている.本研究の結果においても,立位バランス低下と転倒の既往が転倒・転落の独立した予測因子であったと考えられる.また,ROC曲線によるカットオフ値から多職種と連携し,必要な患者に対して早期に転倒予防対策を立案することが可能となった. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は春日井市民病院倫理審査委員会の承認を受けた. (承認番号528)</p>

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