後外側骨片を伴う大腿骨転子部骨折の歩行予後

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 近年、大腿骨転子部骨折の診療の際、術前に骨折型をCTで評価することが一般的となっている。その中で後外側骨片 (以下、PL骨片)が多く存在することがわかってきた。 PL骨片の報告は術後カットアウトやSwing motionなど手術成績に関するものが多く、歩行予後への影響についての議論は不十分である。本研究の目的は、PL骨片の有無が歩行予後に与える影響を調べることとした。 </p><p>【方法】</p><p> 2020年1月~2021年12月に大腿骨転子部骨折と診断され、当院で手術を施行した91例を診療録より後方視的に調査した。取り込み基準は1)65歳以上、2)内固定インプラントがPFNA。除外基準は、1)再診がない、2)認知症で指示動作が不可、3)複数外傷、4)重度運動麻痺の既往、5)受傷前非歩行、6)周術期死亡、 7)入院中の再骨折とし、最終的な対象者は50例となった。対象者をPL骨片の有無によってNormal群、PL群に群分けした。調査項目は患者特性の項目として、年齢、性別、身長、体重、 Body Mass Index(以下、BMI)、受傷側、既往歴、受傷前歩行形態。手術の情報として、術前CT (中野3DCT分類)、術後Xp (AP3/ML3分類、Sliding量)、手術時間。術後経過の情報として、鎮痛薬頓服回数、術後離床開始日、術後7日目の歩行距離、初回再診時の歩行形態 (平均3.26ヶ月)を調査した。主要アウトカ ムは初回再診時の歩行形態。その他の項目を副次アウトカムとして単変量解析を行った。統計ソフトはEasyR (ver1.61)を用い、有意水準は5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p> Normal群12例、PL群38例。主要アウトカムの再診時の歩行形態はPL群で有意に低下した(p<0.05)。副次アウトカムは患者特性に関する項目では有意差を認めなかった。一方、手術の情報ではSliding量、術後経過の情報では術後7日目の歩行距離で有意差を認めた (p<0.05)。歩行レベルが受傷前と変わらずに維持出来たのは全症例で49.1%、群別ではNormal群で86.0%、PL群で36.6%であった。 </p><p>【考察】</p><p> 術前検査でPL骨片を認める場合、歩行再獲得率が低下することがわかった。PL群はSliding量が多いが、期間中にカットアウトに至った症例はなかった。SlidingはNailの特性上当然起きるも のであり、カットアウトに至らなければ問題視されないことが多い。しかし、頚部が短縮し中殿筋効率が落ちるため、歩行再獲得の阻害因子となった可能性はある。今後は理学療法介入が可能な可変事項について、調査を続けたい。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> トヨタ記念病院臨床研究診査委員会の承認を得た (承認番号: R342)。</p>

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