訪問リハビリテーション利用者における転倒経験と現在の生活機能、心身機能の関係:パイロットスタディ

DOI
  • 佐藤 惇史
    医療創生大学 健康医療科学部 医療創生大学大学院 生命理工学研究科
  • 村瀬 力真
    東洋リハ株式会社 南天訪問看護ステーション
  • 佐野 祐貴子
    医療創生大学 健康医療科学部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>転倒の経験、特に過去1年間の転倒はその後の再転倒や骨折発生のリスク要因となり、転倒による骨折、転倒恐怖心は活動量や身体機能の低下などに影響する。実際、在宅自立高齢者において、転倒経験が1年半後のADL障害のリスク要因に挙げられており (原田ら、2006)、転倒を予防していくことが重要である。訪問リハビリテーション (訪問リハビリ)では、転倒予防に向けた介入も行われているが、訪問リハビリ利用の在宅療養生活者の自宅内転倒率は19.3%とされ (西田ら、2014)、介入プログラムの検討のみならず、転倒経験の把握やその後の支援も必要である。本研究では、訪問リハビリ利用者を対象に、過去1年以内の転倒の有無と、現在の生活機能や心身機能がどのように関係しているのか調査した。 </p><p>【方法】</p><p>対象は訪問リハビリを利用している在宅療養者45名とした。調査項目は、過去1年間の転倒の有無、疾患名、年齢、 BMI、ICF staging、握力、5回立ち上がりテスト、Life-Space Assessment (LSA)、Mini Mental State Examination (MMSE)と した。ICF Stagingは、ICFコードに基づいた、“基本動作”、 “歩行・移動”、“食事・嚥下”、“食事・動作”、“排泄”、 “入浴”、“整容・口腔”、“整容・整容”、“整容・衣服”、 “余暇”、“交流”、“認知・見当識”、“認知・コミュニケーション”、“認知・精神活動”の14項目をそれぞれ5段階で評価するものであり、本研究では生活機能の指標として用いた。調査項目は、担当理学療法士や作業療法士が、定期評価の中で収集した。統計解析はMann-WhitneyのU検定を用いて行い、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>過去1年間の転倒状況は、転倒あり (転倒群)21名、転 倒なし (非転倒群)24名であった。転倒群の疾患は、神経系疾患 16名、筋骨格系疾患2名、新生物2名、循環器系疾患1名であった。生活機能の転倒群と非転倒群の比較において、食事・動作、余暇、認知・精神活動、LSAが転倒群で有意に低値であった。心身機能の比較では、MMSEが転倒群で有意に低かった。その他の項目については統計学的な差は見られなかった。 </p><p>【考察・結論】</p><p>本研究の範囲内において、過去1年間の転倒の有無は、その後の食事や認知・精神活動、余暇活動、生活範囲に影響を及ぼす可能性が示唆された。転倒と生活・心身機能との関連性を明らかにするために継続した調査が必要である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象者に研究の目的などを口頭にて十分に説明した上で、同意が得られた対象者のみ調査を実施した。</p>

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