地域高齢者のライフイベントと社会的健康度:ポジティブおよびネガティブな側面からの検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 近年、高齢期の健康状態の指標として、身体、認知、心理的な健康度に加え、社会的な健康度を評価することの重要性が認識されており、これを表す概念の1つとして社会的フレイルが提唱された。社会的フレイルは障害発生や死亡のリスクに影響することが報告されているが、社会的フレイルの発生に影響する因子については未だ十分に検討されていない。本研究では、高齢期に経験するポジティブおよびネガティブなライフイベントが社会的健康度に及ぼす影響について、操作的に定義した社会的フレイルを用いて検討した。 </p><p>【方法】</p><p> 対象はベースライン時点で社会的フレイルのない地域高齢者 2,174名とした。社会的フレイルは、1)独居である、2)外出頻度の減少、3)友人を訪ねることがない、4)誰とも話さない日がある、5)家族や友人の役に立っている気がしない、の5項目のうち2項目以上に該当する場合と定義し、ベースライン (2011年)と4年後 (2015年)において評価した。ライフイベントは先行研究に基づき、ポジティブなイベントの有無 (「子や孫の結婚」「孫やひ孫の誕生」「新たな友人との出会い」のうち1つ以上)と、ネガティブなイベントの有無 (「経済的困難さの増大 」「配偶者の病気や怪我」「家族や友人の死」のうち1つ以上)を、ベースラインから15カ月間について評価した。 </p><p>【結果】</p><p> 多変量ロジスティック回帰分析の結果、ネガティブなライフイベントの経験 (1つ以上)は社会的フレイル発生と関連しなかった (オッズ比: 1.17、95%信頼区間: 0.83-1.59)が、ポジティブなライフイベントの経験 (1つ以上)は社会的フレイル発生のリスク低下と関連した (オッズ比: 0.48、95%信頼区間: 0.34-0.67)。さらに、ポジティブなライフイベントと社会的フレイルとの関連は、同期間にネガティブなイベントも経験した対象者 (1,059名)に限定した感度分析においても保たれた (オッズ比: 0.55、95%信頼区間: 0.34-0.88)。 </p><p>【考察】</p><p> ポジティブなライフイベントは社会的フレイル発生に保護的に働く可能性があり、社会的健康度の維持向上に向けた戦略立案に有用な知見が得られたと考えられる。一方、本研究ではネガティブなイベントは社会的フレイルと関連しなかったが、先行研究では社会的孤立や孤独感との関連が報告されており、今後は個々のライフイベントの内容や社会的健康度の評価指標の違いを加味した追加検証が必要である。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員 会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。</p>

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