介護予防における姿勢指導とその影響

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  • 尾﨑 智之
    医療法人社団山斗会山中整形外科内科クリニック リハビリテーション科
  • 藤田 由貴子
    医療法人社団山斗会山中整形外科内科クリニック リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 厚生労働省社会保障審議会介護保険部会によると,要介護状態に至った原因の多くが「関節疾患」,「転倒・骨折」と報告されている.身体の各関節は骨盤の傾きの影響を受けており,関節疾患と姿勢は密接な関係がある.また,不良姿勢によるバランス障害は転倒リスクを高めるとの報告も多く,姿勢と転倒との関係は深い.高齢者の姿勢は,半数以上が加齢に伴う脊柱変形を呈し,特に脊柱後弯を多く認める.一旦生じた脊柱変形は経時的に進行していくため,中・高年者が自身の姿勢変化に気付き,経時的にモニタリングができるような,スクリーニング方法,継続して実施できる運動や生活指導が重要とされている.運動の継続には 「運動しよう」という行動意図が重要であり,行動意図を反映しない介入は運動継続に効果がないことが報告されている. そこで今回当院主催の介護予防講座にて経時的にモニタリングができる姿勢セルフチェック方法の指導を実施し,姿勢に対する意識の変化とその満足度を調査したので報告する. </p><p>【方法】</p><p> 対象は当院の介護予防教室参加者の中から同意の得られた12名とした.姿勢評価には栁田らの簡易姿勢評価法を使用し,評価結果を当院独自の姿勢チェックシートを作成した.アンケート用紙にて介入前後の姿勢に対する意識の変化とその満足度を調査した. 統計処理は,実施前後の意識の変化に対してはウィルコクソンの符号付順位和検定を用い有意水準は0.05未満とした.満足度で は総合満足度と各項目に対し相関分析を行った. </p><p>【結果】</p><p> 姿勢への意識の変化は,有意水準0.05未満となり有意に変化が 認められた.総合満足度と各項目との相関分析では,「講師の指導」「姿勢チェックシート」の2項目において中等度の相関が認められた.「セルフチェック」では弱い相関が認められた. </p><p>【結論】</p><p> 介護予防教室における姿勢指導によって,参加者の姿勢の意識に有意に変化が認められた.患者満足度では,「講師の指導」「姿勢チェックシート」と満足度の関係はあるものの,「セルフチェック」との関係は低い結果となった.運動継続のための経時的なモニタリング手段として用いた今回のセルフチェック方法に対しては改善が必要ある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言ならびに当院倫理規定に則り,活動内容およびアンケート調査結果を研究発表として報告することを説明し同意を得た.</p>

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