当施設利用者の身体機能低下に影響する要因の調査~握力・歩行評価による検討~

DOI
  • 中島 裕介
    株式会社まつもと薬局 機能訓練特化型デイサービス NeoReha

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 日常生活に組み込まれた運動習慣や社会参加がフレイル予防につながることが明らかになっている.当施設でも運動,栄養指導に特化した関わりにより利用者の身体機能に維持・改善の傾向がみられている.しかし,中には低下の傾向を示す者も一定数存在する.本調査では利用者の体力測定結果を維持・改善群と低下群に分け,比較検討することで低下傾向に影響した要因を明らかにすることとした. </p><p>【方法】</p><p> 当施設利用者で自立歩行可能であり,体力測定を実施している 74名 (平均年齢81.3±6.5歳,男性16名,女性54名)とした. 研究デザインは後ろ向きコホート研究を実施した.期間は 2022年6月~12月までの6ヶ月間で実施した体力測定のデータを用いた.体力測定は握力,5m歩行,TUG,6MDを実施した.栄養評価はInbody430 (株式会社インボディ・ジャパン社製)を使用し,BMI,骨格筋量,体脂肪率を測定した.運動開始時と3ヶ月後の値の差により握力と歩行評価のそれぞれで維持・改善群,低下群の2群に分けた.判断基準は太田尾らの測定誤差の値をもとに握力は4.8kg以上,歩行評価は5m歩行時間が0.5秒以上の低下がみられたものを低下群とし,それ以外を維持・改善群とした.各2群間で年齢,性別,家族環境 (独居,同居),家庭での役割の有無,各栄養評価の結果に対し統計処理を実施した.統計解析は各変数の尺度や正規性に応じて Student'sのt検定,カイ二乗検定にて比較を行った.有意水準は5%未満とした. </p><p>【結果】</p><p> 各2群間の比較において,握力では年齢は低下群が有意に若年であった(p<0.01).性別は低下群が有意に男性が多い傾向がみられた(p<0.01).家庭での役割の有無は低下群は有意に家庭での役割が無い傾向がみられた(p<0.05).家族環境と各栄養評価には有意差はみられなかった.歩行評価では年齢は低下群が有意に高齢であった(p<0.01).性別,家族環境,家庭での役割の有無,各栄養評価の結果はいずれも有意差が認められなかった. </p><p>【結論】</p><p> 低下の要因として,握力では年齢,性別,家庭での役割の有無が,歩行評価では年齢が関与していることが示唆された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した.データは匿名化処理を行い,個人情報保護に十分配慮して管理した.</p>

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