通所介護施設における嚥下機能のスクリーニング評価の重要性 -自覚症状と嚥下機能の誤差での検証-

DOI
  • 大暉 櫻井
    株式会社ルネサンス アクティブエイジング部

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 高齢者の地域生活を援助する上でフレイル予防の重要性が提言され,様々な対策が病院や地域活動を通して行われている.近年はフレイルの中でも“オーラルフレイル”に注目が集まり,身体 的フレイルに与える影響も非常に高い事が分かっている.オーラルフレイルは嚥下機能の低下を引き起こす事も多く,肺炎の大きな原因である“誤嚥”の原因ともなる. 加齢と共に誤嚥のリスクは増大し要介護高齢者では約7割の方が口腔嚥下機能に課題を抱えていると言われている. 一般的に通所介護施設では口腔嚥下機能に対するスクリーニング評価は問診で行う事が多いが,臨床場面では問診上で課題が無いが嚥下機能が低下している場面を多く見受ける.そこで今回は ,嚥下障害の自覚症状と実際の嚥下機能の誤差の有無を比較検討し,地域高齢者における嚥下障害のリスクやスクリーニング検査の必要性を検証する事とした.. </p><p>【方法】</p><p> 地域高齢者7307名 (平均年齢78±33)を対象とした.嚥下機能のスクリーニング評価は嚥下障害の自覚症状を問診で行い,嚥下機能の評価は反復唾液嚥下テスト (以下RSST)を用いた.. </p><p>【結果】</p><p> ムセの自覚症状“あり”と回答した中でRSSTが2回以下の方は 972/2474人 (39%),ムセの自覚症状“なし”と回答した中で RSSTが2回以下の方は1614/4833人 (33%)であった.統計処理はカイ二乗検定を実施し,ムセの自覚症状はRSSTの回数と関連があるとは言えない結果となった.. </p><p>【考察・結論】</p><p> 今回の検証により,ムセの自覚症状とRSSTの回数には関連があると言えず,問診のみで嚥下障害のリスクを評価する事は難しいと示唆された.さらに,33%ものご利用者がムセの自覚症状がなくRSSTが2回以下であった為,自覚的な嚥下障害と実際の嚥下機能には誤差がる事が示唆される結果となった.このような結果に至った要因の1つとしてオーラルフレイルに関する知識の広まりが少ない事が挙げられる.身体的フレイルの症状である筋力低下や体力の減少は認知度が高く,危機感を感じている高齢者も多くいる.その一方,オーラルフレイルに関しては,高齢者の間で知識が浸透しておらず,危機感も低い事が原因なのではないだろうか.しかし,本研究では自覚症状を“ムセ”のみでしか評価できておらず,嚥下障害やオーラルフレイルに関する自覚症状の検証には至っていない.今後はオーラルフレイルの認知度も含め検証を進める必要がある.. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>データの利用に関しては事前に同意を得ております. 並びに開示すべきCOIはございません.</p>

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