地域における骨粗鬆症検診と骨折予防策

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  • 旭 竜馬
    日本保健医療大学 保健医療学部理学療法学科

抄録

<p>令和4年版高齢社会白書によると、介護が必要となった主な原因の中で、転倒・骨折による割合は13.0%と示されている。我が国の2022年現在の高齢化率は29.1%となり、超高齢社会に伴い骨折患者数は増加傾向にある。特に大腿骨や椎体の骨折は将来の死亡リスクを高めてしまうことが報告されており、また一度骨折を起こすと再骨折や別の部位を骨折するリスクが高くなる。初発および二次骨折を予防するため、骨粗鬆症、転倒および骨折への対策が重要となる。 このような背景の中、我々は埼玉県の幸手市とともに骨粗鬆症検診での骨粗鬆症早期発見や転倒・骨折予防の取り組みを共同で行ってきた。骨粗鬆症検診において、我々は橈骨遠位部の骨密度や問診とともにロコモティブシンドローム (ロコモ)、筋肉量、歩行速度や握力といった身体機能の評価を行った。アウトカムを1年後の転倒として前向きに調査したところ、ロジスティック回帰分析にてロコモに該当するとオッズ比で2.477倍と転倒の危険性が高まることを示した。 さらに、我々は幸手市内の病院において骨粗鬆症外来患者を対象にロコモや脊椎アライメントの評価、大腿骨や胸腰部椎体骨の骨密度の評価を定期的に実施している。転倒を起因とした骨折は全体の約80%という報告もあり、転倒に関連した骨折 (転倒関連骨折)のリスクを高める要因を検討するため、ベースラインから骨折発生までを後向きに調査した。Cox比例ハザード回帰分析において、ハザード比でロコモの重症度が1.748倍、矢状面上での脊椎アライメント悪化が1.014倍と将来の転倒関連骨折に及ぼす影響が高まることを示した。 市民に対して我々は地域の検診から病院につなげる橋渡しを行いつつ、転倒および骨折にはロコモへの気づきと対策の重要性を発信してきた。本講演では骨粗鬆症、転倒および骨折予防への今までの取り組みと今後の課題を紹介する。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は東埼玉総合病院倫理委員会および日本保健医療大学研究倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号 :20180005およびP3001)。本研究では事前に対象者へ説明を行い、書面に同意を得た。</p>

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