血液透析患者に対する二重課題が注意・遂行機能に及ぼす影響

DOI
  • 浅野 貞美
    群馬医療福祉大学 リハビリテーション学部 医療法人社団圭徳会 秋葉原いずみクリニック リハビリテーション部
  • 山口 智晴
    群馬医療福祉大学 リハビリテーション学部
  • 村山 明彦
    群馬医療福祉大学 リハビリテーション学部
  • 森本 耕吉
    慶應義塾大学医学部 血液浄化・透析センター
  • 諸遊 直子
    医療法人社団圭徳会 秋葉原いずみクリニック リハビリテーション部
  • 藤岡 佳伸
    医療法人社団圭徳会 秋葉原いずみクリニック リハビリテーション部
  • 谷島 薫
    医療法人社団圭徳会 秋葉原いずみクリニック リハビリテーション部
  • 後藤 健
    医療法人社団圭徳会 秋葉原いずみクリニック リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 血液透析患者は認知機能障害を認める割合が高く,認知機能の低下はADLやQOLのみならず生命予後が不良との指摘もあり,その対策は重要な課題である.特に血液透析患者は,長期にわたるシャント管理等のセルフケアを行うため,注意・遂行機能を維持することが必要不可欠である.近年,運動課題と認知課題を組み合わせた二重課題 (Dual task;DT)は認知機能や身体機能の改善に効果的であることが示されている.しかし,血液透析患者を対象にDTを用いた介入研究は数少ない.そこで,本研究では血液透析患者に対するDTを用いた介入が,注意・遂行機能に及ぼす影響を予備的に検討した. </p><p>【方法】</p><p> A医療機関に通院中の外来血液透析患者30名を,通常の透析治療に加えてDTを実施する群 (DT群),通常の透析治療に加えて運動課題のみ実施する群 (運動群),通常の透析治療のみの対照群の3群に10名ずつ割り付けた.運動群とDT群に対する運動課題は有酸素運動 (エルゴメータ)とし,DT群には運動課題に加え同時に計算課題を実施した.運動の頻度と強度は腎臓リハビリテーションガイドラインに準じて個別に設定した.介入は週2回,12週間実施した.各群には,介入前後にTrail making test part B (TMT-B)で注意・遂行機能を評価した. </p><p>【結果】</p><p> 介入期間中に死亡,入院,転院した計5名を解析から除外し,解析対象はDT群9名,運動群,対照群は各8名とした.ベースライン時の基本属性,TMT-B所要時間は3群間で有意差を認めなかった.介入前後のTMT-B所要時間(平均±標準偏差)は,DT群のみ介入前207.1±118.1秒と比較し,介入後155.1±74.4秒で有意に短縮した (paired t-test; p=0.017)が,運動群,対照群では有意差を認めなかった.またDT群,運動群,対照群におけるTMT-B所要時間の変化率は,それぞれ -20.7 ± 16.5%, -8.9 ± 17.5%,7.7 ± 18.4%で,DT群と対照群の間のみ有意差を認めた (ANOVA, Post-hoc test; p=0.008). </p><p>【考察】</p><p> 本研究結果により,血液透析患者に対するDTは,注意・遂行 機能の改善に寄与できる可能性が示唆された.本介入における DTは,一定の回転数でペダルを漕ぐことに向ける注意と計算課題に向ける注意を分配する必要があり,12週間にわたって継続的に遂行したことで,注意・遂行機能の改善に寄与した可能性がある.今回得られた結果をもとに,今後は対象者数を増やして介入の効果を検証していきたい. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は善仁会グループ倫理審査委員会で承認を得た上で実施した (承認番号:2022-0010).また,対象者には本研究の趣旨と目的を十分に説明し,同意書への書面により同意を得て実施した.</p>

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