人工膝関節全置換術後に短期間で身体機能が低下した患者の特徴~術前因子からの探索~
抄録
<p>【はじめに、目的】</p><p> 人工膝関節全置換術(TKA)後の身体機能の改善は、術後3~6ヶ月で頭打ち(プラトー)に達すると言われている。しかし、術後理学療法の終了後、改善した身体機能が短期間で低下する患者を臨床場面に散見する。これは要介護の原因になることが考えられ、身体機能を維持するための3次予防が重要となる。そのため、術後に身体機能が維持できなかった患者の特徴を把握することは、TKA後の3次予防を推進するための一助となる。本研究の目的は、TKA後3ヶ月~1年にかけて身体機能が低下した患者の特徴を、術前因子から探索的に調査することである。 </p><p>【方法】</p><p> 対象者は、2016年9月~2017年8月に変形性膝関節症(膝OA)で両側同時または片側TKAを施行し、術後3ヶ月まで外来理学療法を行った者とした。研究デザインは後方視的研究とした。対象者には術後身体機能の回復推移を把握するため、術後3ヶ月と1年に患者立脚型アウトカムである準WOMAC身体機能項目 (WOMAC-F)を行い、その間で5.5点以上減点した者を低下群、それ以外の者を維持群に群分けした。低下群の基準値は、分布に基づく方法から臨床最小重要差(MID)を算出し定義した。術前因子は、基本属性(年齢、性別、BMI)、医学情報(膝OAグレード、他部位の疼痛の有無、片側/両側手術)、身体機能(膝屈曲・伸展角度、等尺性膝伸展トルク)、準WOMAC疼痛項目 (WOMAC-P)、WOMAC-Fとした。統計解析は、低下群と維持群で術前因子の群間比較を行った。さらに、従属変数に低下群・維持群、独立変数に群間比較で有意な傾向となった変数 (P<0.10)を投入したロジスティック回帰分析を行い、術後に身体機能が低下した患者の特徴を探索した(P<0.05)。 </p><p>【結果】</p><p> 対象者105名(平均年齢72.5歳、女性84.8%)のうち、低下群は 11名(10.5%)であった。群間比較で有意な傾向を示した変数は、年齢、他部位の疼痛、膝屈曲・伸展角度、WOMAC-P、 WOMAC-Fであり、低下群の方が高齢かつ劣勢であった。また 他部位の疼痛に関して、主に腰痛が多かった。さらにロジスティック回帰分析の結果、他部位の疼痛(Β:1.92, OR:6.85, 95%CI:1.35-34.7)とWOMAC-F (Β:-0.09, OR:0.92, 95%CI:0.87-0.97)が抽出された。 </p><p>【考察】</p><p> TKA後に短期間で身体機能が低下した患者は、術前に他部位の疼痛と重度の身体機能低下を有していた。この結果から、術前に2つの特徴が該当した患者に対して、術後の身体機能を維持するための3次予防が必要であると示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、研究代表者が所属する病院の倫理審査委員会の承認を得た。なお、ヘルシンキ条約に基づき、対象者には事前に研究の趣旨を説明し、同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 2.Suppl.No.1 (0), 318-318, 2024-03-31
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018198840826880
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可