悪性骨腫瘍複数回再発により下腿切断となったが人工脛骨断端での義足歩行を獲得した症例について

DOI
  • 冨士 佳弘
    大阪国際がんセンター リハビリテーション科
  • 田宮 大也
    大阪国際がんセンター リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>悪性骨腫瘍は難治性希少がんの一つである。四肢 に生じた際、可能な限り患肢温存を行うが、骨欠損がある場合は腫瘍型人工関節置換術を施行することが多い。しかしながら、人工関節置換術後の再発については確立した治療法はない。本症例では人工関節部位での切断となり、義足装着にて日常生活動作の獲得を図った。 </p><p>【症例紹介】</p><p>47歳、女性。X-16年、右大腿遠位骨腫瘍に対し て掻爬術を施行。X-14年、再発により遠位大腿骨人工置換術を施行。X-3年、再発により腫瘍広範切除術および人工脛骨置換術を施行。その後、ADLは自立し職場復帰されていたが、X年の再発により人工脛骨長13cmで下腿切断術を施行。既往歴は、 X-5年子宮頸がんによる広範子宮全摘術および両付属器摘出術、放射線治療。 </p><p>【経過】</p><p>POD (Postoperative Day)1より理学療法介入を実施。 X-3年に手術歴があり、術創部の遷延治癒が予想されたため、両松葉杖歩行の獲得により一時的な自宅退院の計画となる。 POD15、弾性包帯の脱着、両松葉杖歩行、階段昇降の自立、トイレ、風呂、家族への介助指導終了により退院。POD22・26・33、外来にてADLの確認、筋力増強練習、関節可動域練習を継続。POD41、術創部の安定が得られたため、再入院し義足歩行練習を開始。幻肢痛はVAS (Visual Analogue Scale)にて3から 5。断端の皮膚トラブルはなし。左下肢や骨盤帯、腰背部痛の出現。断端周径の変動が大きくなり練習日毎の調整が必要となる。POD62、下腿義足を装着し、片松葉杖歩行にて自宅退院。胸椎部と腸骨に多発骨転移が発覚。POD68・75・96・117、外来にてADLの確認と疼痛への対応を継続。POD130、職場復帰。 </p><p>【考察】</p><p>がんの理学療法において、転移の出現時期は不明であるため、通例の切断後の理学療法よりも速やかな義足歩行の獲得を目指した。医師との密な連携により幻肢痛以外の疼痛に対応したこと、外来での理学療法により疼痛の軽減を目的とした動作指導を行ったことが奏功したと考えられる。また、切断肢はインプラントでの荷重となるため、疼痛の出現箇所と皮膚の状態に注意して理学療法を実施した。断端が人工物であっても義足歩行に耐えうる結果を得たことは今後の理学療法の一助になりうる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本症例報告では、患者から文書による同意が得られました。患者には病態や治療法に関する説明が行われ、同意を得た上で本症例の報告が行われます。患者は自由意志に基づいて同意し、同意書が取得されました。</p>

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