パーキンソン病者に対するヘルスプロモーションに関する取り組み

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> WHOは医療機関にヘルスプロモーションの考え方や戦略を組織的に組み入れた活動を行うことを勧めている.パーキンソン病者は一般高齢者と比べてフレイルの罹患率が高く,また肺炎や転倒・骨折などの合併症も多く報告され,これらがADL,QOL低下の要因となっている.一般的に薬剤調整不備や肺炎,廃用症候群といったような状態が悪化し加療のために入院しリハビリテーションを行うことが多いが,当院では2022年よりパーキンソン病教育入院を開始し,ヘルスプロモーションの観点からリハビリテーションを行う取り組みを行っているため紹介する. </p><p>【方法】</p><p> パーキンソン病教育入院を希望した患者を対象とし,10日間の入院期間に患者・家族に対し多職種 (医師・看護師・薬剤師・公認心理士・管理栄養士・歯科衛生士・社会福祉士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が介入し,症状や現在の状態について情報提供を行った.具体的にはカンファレンスや疾病理解目的の勉強会,栄養指導や口腔機能精密検査,理学療法,作業療法,言語聴覚療法,アドバンスケアプランニング等を行った.理学療法は主に運動機能,作業療法では日常生活動作やQOL等,言語聴覚士は発声・構音・嚥下機能等を評価し,患者へフィードバックを行った.加えて,姿勢や動作を把握し,繰り返し確認することを目的に写真や動画を撮影し,ホームプログラムを指導している.退院後は外来リハビリテーションを行い,自宅での運動継続の有無や心身の状態を確認している. </p><p>【結果】</p><p> 患者・家族を対象としたアンケート調査では高い満足度を得た.理学療法介入後によるアンケート調査では「退院後の運動習慣の可否」に関して,全例で実施できそうであるという結果がみられた.加えて姿勢変化や歩行や家事など各動作の注意点を理解され,自宅で実践できているケースもみられる. </p><p>【考察】</p><p> パーキンソン病教育入院を契機として多職種による包括的な介入を行うことによって患者自身が自分の心身状況を理解し,医療者や家族に相談できる機会を作ることができた.そして,生活上の対応策を知り自宅で実践するというサイクルを作り,繰り返していくことがパーキンソン病者におけるヘルスプロモーションの一環になるのではないかと考えている. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した.対象者には本研究の目的と内容を説明し口頭および書面にて同意を得て実施した.</p>

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