高齢高血圧者は3か月間の体操で心血管系の循環動態が正常血圧者に近づいたか?

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>循環器系疾患で治療効果の判定にも使用できる簡便な検査としてハンドグリップテスト (HGT) がある.高血圧患者では通常,正常血圧の患者と比較して,より大きな血圧上昇がみられると報告されている.我々の研究でも高齢正常血圧者 (norm)と高齢高血圧者 (HT)でHGTを施行すると,頸動脈エコーで計測した心収縮性指標 (W1)はnormでは減少したのに対して,HTは上昇し有意差が生じた (p < 0.05).</p><p>【目的】</p><p>今回HTのHGTに対する循環動態指標の反応が,1回 20分の体操を週5回3か月実施することでNormの反応に近づくかを検証した.</p><p>【方法】</p><p>対象はnorm12名(71±6歳,男性1名) とHT10名(69 ±10歳,男性6名) .安静時の頸動脈エコー測定後,HGTは握 力の40%強度で60s保持し,60s (HGT60s)時点の頸動脈エコーを再測定して,安静時からの変化率を算出した.次に1回20分の体操をDVD見ながら共に実施し指導した.その体操を3か月間自宅で週5回以上実施して頂き,3か月後,体操実施前と同様に頸動脈エコーによる測定を行った.頸動脈血流の流速Uと血管径変化波形と相似と仮定して求められる血圧波形Pからwave intensity W I = (dU/dt) (dP/dt)を算出する.WIの最大値W1は心臓カテーテルで得る心収縮性指標dP/dtと高い相関がある.統計はWilcoxonの順位和検定とtwo-way ANOVA, post-tecは Bonferroni法を使用した.</p><p>【結果】</p><p>normとHT間の比較で,体操前は安静時の収縮期,拡張期,平均血圧,脈圧に有意差があった (p < 0.0001, p = 0.01, p < 0.0001, p = 0.01). HGT反応では拡張期血圧とW1は HTが有意に高かった (p < 0.05, p < 0.01).3か月後は安静時, HGT共にこれらの有意差はなくなった.</p><p>【結論】</p><p>1回20分の体操を週5回3か月実施することでHGT60sの循環動態指標の反応がNormの反応に近づいた.今後は人数増やし男女差の検討も必要であろう.</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、ヘルシンキ宣言と「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を尊守しており,姫路獨協大学生命倫理委員会に承認 (姫獨生19-19) されている.</p>

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