スリーブ状胃切除術における減量入院後の手術待期期間は術前後の減量効果に影響するか?

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 肥満外科治療は高度肥満症に対する最も効果的な治療法である。診療報酬上、手術治療には最低半年の内科治療期間を設け、術 前期間中に総体重から5%以上の減量が必要となる。多くの施 設で術前の減量入院が取り入れられている。高度肥満症患者は糖尿病をはじめとする健康関連疾患の合併に加え、精神疾患の合併や知的な問題を抱える症例も多い。術前減量が術後の減量効果に影響する報告もある中で、減量入院直後に手術することは患者の治療抵抗性の把握を不十分にし、自殺などの有害事象を増加させる恐れがあり推奨されていない。しかし、国内のコンセンサス等においても具体的にどの程度の期間を設ければよいか明らかになっておらず各施設の判断に委ねている現状にある。術前待期期間 (time to surgery:以下TTS)においての先行研究ではTTSの長短 (平均209日)は術後の体重減少に影響しないという報告がある。当院では術前に2週間の減量入院を行い、各種専門職の介入を通じて術前減量を進めつつ、カンファレンスで患者の手術可否を検討している。今回我々は当院減量入院後のTTSが術前後の体重減少に影響しないか調査した。 </p><p>【方法】</p><p> 2017年~2022年までに当院でスリーブ状胃切除術を施行し、術後1年間追跡調査を終了した32例を対象とした。減量入院の退院日から手術日までをTTSと定義した。中央値は29日でそれ以内に手術を受けたものを短期群 (n=18)、それを超過したものを長期群 (n=14)とし、術前および術後の1年時点の総体重減少率 (%TWL)をそれぞれ比較した。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> TTSは短期群で22日 (20-28.5)長期群で49日 (36-83.75)であった (P<0.01)。術前%TWLは短期群8.50 (4.27-9.61)、長期群 8.14 (7.44-9.35)と差は認めなかった (P=0.866)。術後12か月 時点の%TWLは、短期群29.6 (±9.26)、長期群26.1 (±7.11) と差は認めなかった (P=0.252)。 </p><p>【考察】</p><p> 先行研究同様、減量入院後のTTSは術前後の減量効果に影響しなかった。専門スタッフによるチーム介入によって患者の安全面が十分考慮されていれば、減量入院で十分な術前減量を達成し短期間で手術に向かうことも可能かもしれない。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、および個人情報能保護について十分に説明し、口頭で同意を得た。また患者の個人情報とプライバシー保護に配慮した。</p>

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