年齢と姿勢制御の様式が方向転換動作の運動戦略に与える影響

DOI
  • 渋川 佳彦
    青森県立保健大学大学院 健康科学研究科博士後期課程基礎研究・実用技術領域 日本医療大学 保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 橋本 淳一
    青森県立保健大学 健康科学部理学療法学科
  • 李 相潤
    青森県立保健大学大学院 健康科学研究科基礎研究・実用技術領域

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 高齢者の大腿骨頸部骨折は要介護の主要な原因の一つであり,受傷機転の約8割は転倒である.特に方向転換中の転倒は,大腿骨頸部骨折の危険性が直進時と比較して約7.8倍となる.方向転換のステップ戦略はspin turnとstep turnに分類され,体幹では体軸内回旋の戦略と体節が一塊となるen-bloc戦略が観察 される.一方で歩行中の方向転換は回避行動の側面があり,視覚情報に一歩行周期程度の時間で反応する予測機構predictive systemによる姿勢制御が実行される場合がある.しかし,予測機構における方向転換は報告が少なく,予期機構proactive systemとの違いも不明な点が多い.本研究の目的は姿勢制御の様式や年齢が方向転換動作の運動戦略に与える影響を明らかにすることである. </p><p>【方法】</p><p> 対象は若年者,高齢者各12名で,課題は定常歩行中に素早く 90度方向転換することとした.課題1 (予期機構)は事前に進行方向 (右/左/直進)を伝え,課題2 (予測機構)は歩行中に方向表示器で進行方向を指示した.計測は三次元動作解析システム (VICON MT,床反力計,視線計測装置)を使用し,ステップ戦略は動画を観察して判定した.体幹の運動戦略は基準点から各体節 (視線,頭部,胸郭,骨盤)が回旋を開始するまでの時間 (回旋開始時間)から判定した.課題1・2のそれぞれで年齢とステップ戦略の分割表を作成して関連性を検討した.また,年齢が各体節の回旋開始時間に影響するかを二元配置分散分析にて検討した.統計解析には改変RコマンダーVer.4.2.2を使用した. </p><p>【結果】</p><p> 予期機構の方向転換では年齢とステップ戦略の関連は認めら れず (χ2検定,p=0.616),二元配置分散分析では各体節の回旋開始時間に有意な主効果が見出された (p<0.001).予測機構では年齢とステップ戦略の関連が認められ (Fisherの正確確率検定,p<0.001),二元配置分散分析では年齢と各体節の回旋開始時間に有意な主効果,有意な交互作用が見出された (p<0.001). </p><p>【考察】</p><p> 予期機構における方向転換では年齢によってステップ戦略や体幹の運動戦略に関連は認められなかった (高齢者は視線の回旋開始時間が有意に遅延していた).予測機構では若年者は spin turnと体軸内回旋の戦略を用い,高齢者にはその傾向は見られなかった. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号20011).対象者の募集はポスターの掲示にて行い,本研究への参加は本人の自由意志によるものとした.対象者には本研究の概要,目的,意義,方法,個人情報の取り扱い,取込基準,対象者の権利 (同意と撤回等),参加することによる利益と不利益について文書と口頭にて十分に説明し,書面にて同意を得た.</p>

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