通所リハビリテーション利用者の就労状況と身体機能の調査

DOI
  • 野口 涼太
    岩室リハビリテーション病院 通所リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 高齢化が進み働き手不足が深刻化するなかで,高齢者や障害者への就労継続支援が注目されている.その一つとして通所リハビリテーション (以下,通所リハ)が就労継続支援の手段として期待されるが,その実態や特徴については明らかになっていない.そこで本研究では当院通所リハに通う利用者の就労状況や身体機能の特性について調査し,通所リハによる就労継続支援の可能性を検討することを目的とした. </p><p>【方法】</p><p> 2022年12月~2023年4月に当院通所リハに通う就労利用者17 名 (就労群),非就労利用者73名 (非就労群)を対象とした.基本情報や身体機能,就労状況はカルテから収集,あるいは担当職員から聴取した.就労群と非就労群の基本情報 (年齢,性別,介護度,主疾患,発症年齢,同居家族の有無),利用時間をそれぞれ比較した.さらに,両群の基本情報を共変量とした傾向スコアマッチング法にて両群13名ずつを対象から抽出し,握力, Timed Up & Go テスト (以下,TUG),10m歩行テスト,片脚立位時間,等尺性膝伸展筋力をそれぞれ比較した.2群間の比較にはt検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定を用いた.有意水準はいずれも0.05未満とした.統計ソフトはEZR ver.1.55を使用した. </p><p>【結果】</p><p> 就労群と非就労群間において年齢 (就労群:70.4±6.9,非就労群:80.1±7.2),発症年齢 (就労群:61.1±9.5,非就労群: 70.2±10.8),利用時間 (短時間利用者割合,就労群:76.5%, 非就労群:22.8%)に有意差がみられた.マッチング抽出され た両群間においてはTUG(就労群:10.6±3.2秒,非就労群: 17.4±9.4秒)にのみ有意差が認められた.就労者の就労状況は,自営業13名,雇用4名であった.勤務時間,勤務日数は自営業の場合,季節や天候,繁忙状況などにより変動する場合が多く,雇用の場合,短時間やパートタイムでの勤務が多かった. </p><p>【考察】</p><p> 通所リハ利用者で就労している者は年齢,発症年齢が若く,身 体機能が高い傾向があることが示された.通所リハと就労の両立により身体機能が維持されていることが示唆された.さらに,自営業であるなど就労形態の自由度が就労継続に影響することが考えられた.通所リハは就労継続支援の一つの手段となりえる可能性が示唆された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮の上で計画され,岩室リハビリテーション病院の倫理審査にて承認された.利用者に対してデータ取得における包括的同意を書面にて得た上で,ホームページと院内掲示板への書面の掲示による説明と同意撤回の機会を設けた.</p>

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