産業保健領域における理学療法士の認知度調査

DOI
  • 和中 秀行
    神戸労災病院 中央リハビリテーション部 日本産業理学療法研究会 職能委員会
  • 柘植 孝浩
    日本産業理学療法研究会 職能委員会 倉敷成人病センター リハビリテーション科
  • 藤本 昌央
    日本産業理学療法研究会 職能委員会 大和大学白鳳短期大学部 総合人間学科リハビリテーション学専攻
  • 川村 有希子
    日本産業理学療法研究会 職能委員会 株式会社三菱総合研究所 イノベーション・サービス開発本部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 近年、転倒や腰痛などの労働災害への対策に理学療法士の活用が推奨されるなど、理学療法士の産業保健分野への参画の機運が高まっている。一方、産業保健活動に関与している理学療法士は稀であり、この分野でなにができるのかの認知度は低いとされている。そこで、本調査は産業保健活動に従事しているスタッフの理学療法士への認知度を調査し、今後理学療法士が産業保健活動に参画していく上でどのような活動が求められるのかについて検討した。 </p><p>【方法】</p><p> 産業保健活動に関わるスタッフ153名にWebアンケートを実施した。分析項目は、①運動機能に関する対策を行うことができる専門職の認知度、②理学療法士の業務内容の認知度、③理学療法士が支援できる産業保健活動の内容、④職員の運動機能等についての助言を依頼する職種の有無とした。①~③については医療職 (産業医、保健師、看護師、心理職)とその他の職種の 2群でFisherの正確確率検定を行い、回答の相違を検討した(p< 0.05)。 </p><p>【結果】</p><p> 有効回答者数は47名(30.7%)で、医療職が37名、他職種が10名であった。①運動機能に関する対策を実施できる専門職として知っているものは理学療法士が83%と最も多く、次いで健康運動指導士が53%であった。また、②理学療法士の業務内容について、人に説明できる、少し説明できるを合わせて約79%が説明できるという回答であった。③回答者の支援となる産業保健活動は腰痛・肩こり対策に83%、転倒対策に68%、姿勢・動作指導に66%が回答した。どの項目も医療職と他職種で回答に有意差は認められなかった。一方、④職員の運動機能等についての助言を依頼する職種の有無に関して、いない、わからないを合わせて64%であった。また、相談できる職種としては理学療法士、健康運動指導士がそれぞれ4名と最も多かった。 </p><p>【考察】</p><p> 本調査の結果、職種に関わらず産業保健活動に関わる多くの人 が理学療法士について知っていることが明らかとなった。また、 90%以上の人が、理学療法士が産業保健活動に参加することで支援になると回答しており、ニーズがあることも確認できた。しかし、実際に産業保健活動に参画している理学療法士は少ないことも明らかとなった。理学療法士の認知度は高くニーズもあることから、今後は我々理学療法士から積極的に産業保健活動に携わっている方々へ働きかけ、介入実績を作っていくことが重要であると考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本調査において、研究の趣旨、学会等で公表すること、匿名で個人情報は公表しないこと説明し、同意が得 られた者を対象とした。</p>

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