スマートフォン使用時間と頸部屈曲角度の関連について -理学療法学科学生を対象とした予備研究―

DOI
  • 明日 徹
    岡山医療専門職大学 健康科学部理学療法学科

抄録

<p>【目的】</p><p>スマートフォン (以下スマホ)の普及により、筋骨格系障害 (頸部痛や肩こりなど)が大きな問題であると考えられている。本研究の目的は、勤労者のスマホ使用時間が筋骨格系障害へ与える影響を検討する予備的研究と位置づけ、大学生のスマホ使用時間と頸部の屈曲角度の関連を調べることである。 </p><p>【方法】</p><p>理学療法学科学生でiPhoneユーザーを対象とし、測定 に協力を得られた72名 (男性47名、女性25名、年齢19.5±0.9歳)を解析対象とした。被験者は安静椅子座位姿勢を取らせ、肩峰にマーカーを装着し、矢状面上の静止画をタブレットで撮影した。頸部屈曲角度の測定は、肩峰を通る体幹への長軸と肩峰から外耳孔を結ぶ直線がなす角度とした。計測にはスマホアプリ「グリッド線撮影アプリProfessional」を使用した。測定肢位は、①安静時、②スマホ操作時 (Google Formで作成したアンケートをスマホで回答してもらう約10分間)の2種類とした。アンケートの内容は基本属性、スマホ使用に関する内容、疼痛の有無、スマホ依存に関する内容 (簡易版Smartphone Addiction Scale;SAS-SV、10項目60満点;カットオフ値31点以上)とした。対象者の一日平均スマホ使用時間はスクリーンタイムにて調査した。一日平均スマホ使用時間を3群 (A群:6時間未満、B群:6時間以上9時間未満、C群:9時間以上)に分類し、安静時とスマホ操作時の頸部屈曲角度の差 (以下角度差)、 SAS-SVの得点について比較した。統計解析にはSPSS Ver.29を使用し、有意水準は5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p>3群間で角度差に有意差は認められなかった (A群: 17.9±8.8、B群:17.8±11.0、C群:21.2±11.7)が、C群の角 度差が最も高値を示した。3群間でSAS-SVの得点 (A群:25.4 ±6.4、B群:28.6±7.6、C群:28.0±8.9)に有意差は認められなかった。今回の対象被験者の30.6%が、SAS-SVの得点がカットオフ値以上であった。 </p><p>【考察】</p><p>スマホ操作によって頸部がより屈曲することで、頸部周囲の筋への負荷が大きくなり、頸部痛や肩こりの原因となることが報告されている。今回は統計学的に有意な結果は得られなかったが、使用時間が長い群 (C群)で角度差が大きかったことから、使用時間が長いことで将来的なリスクがあると思われた。また、スマホ依存と判定される者が30.6%と、先行研究と同様な結果であった。この点からも、使用時間の延長により、将来的に筋骨格系障害への関与が予想される。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り、研究の目的や方法について十分に説明を行い、書面にて同意を得た。また、岡山医療専門職大学倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号0059号)。</p>

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