介護職員における痛みと専門職アドバイス希望の調査

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>2020年厚生労働省による業務上の疾病発 生状況おいて,労働災害の85%が腰痛であり,特に病院,福祉施設などでは93%が腰痛と公表される.腰痛などによる労働力低下から社会経済的損失が大きく有効な対策が求められている.そこで,本研究は腰痛などによる労働力低下を予防する目的で介護職員を対象に腰痛を中心に痛みの実態と専門職アドバイス希望などを調査することである. </p><p>【方法】</p><p>対象は,特別養護老人ホーム等で勤務している介護職員を対象とし,Google formを用いてアンケートを実施した.その項目は①腰痛の有無と程度,②腰痛増強動作,日常での疼痛増強時期③医療機関通院頻度,④腰痛対策の指導の有無,⑤自宅・職場での腰痛対策実施状況,⑥専門職のアドバイス希望の有無,⑦勤務時間内での受診・腰痛対策指導の希望の有無, ⑧腰痛以外の痛みの有無とその部位,⑨痛みに対する専門職のアドバイス希望の有無,などを設定した. </p><p>【結果】</p><p>81名中58名から有効回答を得た.①腰痛ありが26名 (45%)で平均49.0歳,うち中等度8名 (31%),重度2名 (8%)②腰痛増強動作は持ち上げ動作が17名 (65%),日常での疼痛増強時期が「朝と夜」が10名 (39%)「常時」が8名 (31%)「勤務終了後」6名 (23%)であった.③医療機関通院は5名 (19%)で月1回~週1日であった.④腰痛対策については18名 (69%)が指導を受けていたが,⑤うち自宅および職場にて腰痛対策の実施頻度は「たまに行っている」・「ほとんど行っていない」が 8名 (44%)であった.腰痛あり26名中⑥専門職のアドバイスは 10名 (39%)が希望しており,⑦勤務時間内での受診・腰痛対策は14名 (54%が)が希望していた.⑧腰痛以外の痛みは58名中18名 (31%)が有しており,うち腰痛との合併が12名で腰痛なし群では6名であり,くび・肩こりの訴えが多かった.その6名中,⑨専門職のアドバイスは3名 (50%)が希望していた. </p><p>【考察】</p><p>本研究における介護職員の腰痛有訴率が45%であったが,腰部への負荷が大きい動作の累積回数が増え,腰部周囲組織の経年変化なども加わり,勤務年数に伴い腰痛の有訴率が増加することが予測される.腰痛対策の周知度や実施状況から考え腰痛対策が十分ではなく,また専門職のアドバイスの希望率を考慮して理学療法士などの専門職によるエビデンスのある介入方法が求められる.勤務年数など多様な背景とも関連づけて更に調査を進め分析する必要がある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は本学研究倫理審査委員会の承認を得た (承認番号0220).対象者および施設長には,ヘルシンキ宣言に基づき,事前に研究内容および公表について説明し同意を得た上で研究を行った.また,採取したデータについては個人が特定されないように配慮した.</p>

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