産業理学療法士の育成を目的としたケースメソッド教育の教材開発の試み

DOI
  • 木村 圭佑
    公益財団法人 豊田地域医療センター リハビリテーションセンター
  • 岡原 聡
    大阪急性期・総合医療センター 医療技術部・セラピスト部門
  • 加藤 芳司
    名古屋女子大学 医療科学部 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 事業場において理学療法士等も活用して労働者の身体機能の維持改善を図ることは有用(厚生労働省,2022)とあるが,現状では同分野で活躍できる理学療法士の数は限られている.また野村ら (2022)は,卒後教育において産業保健に関する教育内容をいかに充実させていくかが課題であると述べているが,本邦において産業理学療法の学習機会は限られている.そこで,産業理学療法の学習機会の拡大を図る目的で,ケースメソッド教育に使用するケース教材を作成した. </p><p>【方法】</p><p> 本研究では産業理学療法の定義を,「産業保健領域における理学療法とは,幅広い勤労者へ対応するために,心身の機能評価,作業条件の評価や望ましい身体活動の提案を実践し,健康障害,労働災害の予防ならびに治療と就労の両立支援を達成する理学療法の1つである.(日本理学療法士協会,2017)」とした. ケース教材の作成は4工程で実施した.1)産業理学療法を実践している理学療法士を対象として,半構造化面接によるインタビュー調査を実施.2)インタビューから得られたデータをもとに,複数の事実を組み合わせ,モディファイしたケース教材を作成.ケース教材内に登場する人物や事業所の情報は,リアリティを損ねない範囲で架空の設定とした.3) 演者がディスカッションリードを務め,作成したケース教材を使用した試運転を実施.試運転には産業理学療法に精通している理学療法士に加え,ケースメソッド教育に精通している理学療法士も交えた.試運転実施後に,参加者から教育主題に適した本文,設問となっているか等についてフィードバックを得た.4)得られたフィードバックをもとに,ケース教材を加筆・修正し完成とした. 尚,本研究は一般財団法人愛知健康増進財団の助成を受け実施した. </p><p>【結果】</p><p> 2023年5月時点でインタビュー調査は5名の理学療法士に実施した.また,ケース教材は1ケースの試運転を実施し,他2ケースについては作成中である. 作成したケース教材は「腰痛対策」「作業環境改善」「労働災害防止」をテーマとし,教育主題の中に産業理学療法に従事する際に迫られる,マネジメントや意思決定について盛り込んでいる. </p><p>【考察】</p><p> インタビュー調査から得られたデータでは,マネジメントや意思決定,多職種連携能力などの実践知に該当する項目も多く挙げられた.そのため,産業理学療法においてケースメソッド教育を活用することで,同分野で活躍できる理学療法士の育成に貢献できると考える. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は公益財団法人豊田地域医療センター倫理委員会の許可を得て実施し、対象者には文章にて説明し署名にて同意を確認した.</p>

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