座位および立位での軽作業における主観的疲労感と筋活動量・筋疲労に関する実験研究

DOI
  • 徳田 良英
    帝京平成大学 健康メディカル学部
  • 川田 誠也
    医療法人五星会 新横浜リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 菊田 雄大
    医療法人社団桐和会 川口さくら病院 リハビリテーション科
  • 深草 孝友
    一般社団法人巨樹の会 江東リハビリテーション病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【目的】</p><p>座り過ぎは寿命が短く,肥満度は高く,2類糖尿病や心疾患の罹患率が高い.日本人の座位は約7時間(中央値)で諸外国に比べ長く,座り過ぎの生活習慣改善は急務である.我々は若年健常者の座位および立位での軽作業30分が官能的に許容範囲であったことを第34回日本インテリア学会で報告した.本稿は座位 ・立位の軽作業での筋活動量と筋疲労を評価し予防に向けた方策の基礎的知見を得ることとする. </p><p>【方法】</p><p>対象は健常成人男性11名である.座位作業は市販の椅子,机を用いた.立位作業は机上にスタンディングデスクを設置した.卓上高は各対象者の座位・立位での肘頭の高さとした.室温21~29℃,照度233~330lxであった.作業課題は単純な軽作業(100マス計算30分間実施)を座位・立位のそれぞれで実施した.座位・立位の順序は無作為とし,別姿勢の計測は1週間以上間隔を空けた.官能評価は自覚症しらべ・疲労部位しらべ(日本産業衛生学会産業疲労研究会)の質問紙を用いた.表面筋電図 (1,500Hz)は両側の僧帽筋上部,腰部脊柱起立筋群を分析対象とし,安静腹臥位30秒測定後に作業課題を計測した.筋活動量の算定は,各筋電波形をButterworth filter処理し,座位・立位それぞれの安静腹臥位で計測した5~25秒間の二乗平均平方根(RMS)の平均値を基準値とした.初期(開始後3分30秒~6分30秒の3分間),中期(開始後13分30秒~16分30秒の3分間),後期(開始後23分30秒~26分30秒の3分間)のRMSの平均値を算定し,基準値との比率を各筋活動量とした.各筋の筋疲労は高速フーリエ解析 (FFT)による中間周波数の時間変化の傾きが負のものを抽出し,官能評価の結果と対比した.統計学的解析はWilcoxon順位和検定を用い,有意水準を5%とした. </p><p>【結果】</p><p>自覚症しらべ・疲労部位しらべで,座位では実施後に肩がこる,首の疲労の数値が高くなった.背部・腰部の疲労感は課題後に若干数値が高くなったが値は小さかった.立位では首および下肢の疲労の数値が若干高くなった.立位は座位に比べ腰部脊柱起立筋群の筋活動量は高かった.筋活動量が低い座位においても僧帽筋, 腰部脊柱起立筋群で中間周波数の時間変化の傾きが負のものが見られた. </p><p>【考察】</p><p> 本実験で座位・立位ともに著しい自覚症状はなかった.座位は腰部の筋活動量は低く,自覚症状がなくとも筋疲労の発生が示唆された. </p><p>【結論】</p><p>自覚症状がないと長時間坐位になりがちであるが,筋疲労の発生を理解することで生活改善につなげることが重要である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>帝京平成大学研究倫理委員会の承認を得て行った(承認番号: 2022-017).研究対象者に研究内容を説明し同意を得て行った.</p>

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