産業理学療法のエビデンス構築に向けた学術大会演題からみえる傾向分析―第1回~第5回日本産業理学療法研究会学術大会演題より

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  • 加藤 芳司
    名古屋女子大学 医療科学部理学療法学科 社会医療法人宏潤会大同病院 リハビリテーション科 NPO法人アクティブエイジング研究会 事務局

抄録

<p>【はじめに・ 目的】</p><p> 産業理学療法のエビデンス構築が求められており, 本邦においては日本産業理学療法研究会 (以下本研究会)が2013年に発足した. 初期の活動は職能的事業が中心であったが, 2018年より日本予防理学療法学会との共催による学術大会への参画が始まった. しかしながら, 会員からは学術活動をどのように進めていけば良いかという質問を受ける事が多く, 学術活動推進への課題を感じている. 本研究は, 産業保健領域で研究活動を始めようとする理学療法士が研究テーマを検討するための材料とすべく, 学術大会の演題テーマの傾向を取りまとめた基礎的調査を目的とした. </p><p>【方法】</p><p> 本研究会が過去に開催した学術大会 (2018年~2022年)5回分の一般演題数 (口述,ポスター)と抄録から読み取れるキーワードを各演題から2つ抽出し, 研究対象者, 研究デザインと統計処理記載の有無について集計を行った. 研究デザインの区分は①症例報告, ②シングルケーススタディ, ③観察的研究(横断・縦断研究) , ④調査研究, ⑤介入研究とした. </p><p>【結果】</p><p> 全5回の学術大会演題総数は92演題であった. 演題キーワード総数は52を数え,腰痛予防45.3, 教室・講習会11.7, 健診・メディカルチェック, 作業動作, 健康経営,労働安全衛生が各5.3, プレゼンティーズム, 運動指導, 普及啓発の3つが4.2の順で上位を占めた(%). 研究対象者は一般勤労者23.3, リハビリ16.2, 医療福祉職14.2, 看護11.1, その他35.2であった(%). 研究デザインは観察的研究36.4, 調査研究29.3, 症例報告14.2, 介入研究12.1, シングルケーススタディ1.1となり (%), 統計解析の記載のある演題は 48.5%(48演題)であった. </p><p>【考察・結論】</p><p> 労働災害の上位を占める職業性腰痛は, 取り組みしやすい領域と言え, 調査結果も大きな割合を占めた. また, 産業理学療法として対象とするべきVDT障害, COPD, 生活習慣病, メンタルヘルスおよび復職, 就労支援などの演題は最小限に留まり, これらの領域のエビデンス構築に向けて更なる研究活動が求められる.研究デザインにおいてはエビデンスレベルと研究実施環境構築の難易度との関係性を踏まえた`結果が見てとれ, 日頃, 臨床業務に従事しながら研究に取り組まれている理学療法士の苦労が推測され, 今後, 更なる研究支援の必要性が感じられる結果となった. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は, ヘルシンキ宣言および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき, 対象者のプライバシーおよび個人情報の保護, 研究内容について理解し, 研究は調査研究に属し,研究対象が特定されるような記載は生じず,プライバシーポリシーに十分配慮した内容である。</p>

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