軽症脳卒中患者に対する「フレイル予防ネット」の取り組み

DOI
  • 太田 幸子
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部
  • 山下 遥
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部
  • 西薗 博章
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部
  • 横田 千晶
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部

抄録

<p>【背景】</p><p> 近年、急性脳卒中患者に対する再灌流療法を含めた診療の進歩 により、約半数例が急性期病院より直接自宅退院となっている。我々は、自宅退院患者の退院3ヶ月後リハビリテーション外来 にて機能評価を行っているが、円滑な社会復帰困難例が少なくないことに気づいた。そこで、自宅退院患者に対して、3か月後の身体活動量の低下要因を調べたところ、退院時のアパシーが関連することを明らかにした (Yokota C, et al, 2021)。2022年より、脳卒中学会が中心となって、脳卒中患者支援に向けた 「相談窓口」を日本各地に開設する動きが始まった。 </p><p>【取り組み】</p><p> 当院では2019年より、医師・看護師・薬剤師で構成されていた入院中の脳卒中集団指導に、理学療法士が加わり、独自に作成した冊子を用いた個別の生活・運動指導を開始した。更に 2021年11月より、吹田市と提携し、地域包括支援センター・保健センター (以下、地域センター)と連携した「吹田フレイル予防ネット」を立ち上げた。具体的な内容は、3か月後の当院外来までに2回、地域センターのスタッフが患者宅を訪問し、患者の困りごとを聴取し、必要に応じて生活指導、地域保健活動の紹介を行っている。更に、企業の協賛を得て、希望者には運動習慣を身につけるため、スポーツジムでの集団運動や自宅でのtelerehabilitationを3ヶ月間無料で参加してもらった。 2022年9月までに吹田フレイル予防に登録した患者は40例 (平均66.5±2.0歳、男性23例) (スポーツジム参加18例、 telerehabilitation参加13例)である。患者アンケートを行い、社会復帰状況を調査した結果、病前に仕事をしていた25例中、完全復帰例は17例 (68%)、入院前より趣味活動をしていると答えた29例中、入院前に戻ったと回答した例は23例 (79%)であった。地域センターの訪問により、退院時に介護保険は不要と思われた例でも、退院後、介護サービスの調整がスムーズ受けられたや、家族の困りごと相談、地域運動活動の情報提供が良かったという感想を得た。2022度からは、吹田市に加えて摂津市との「フレイル予防ネット」の提携が成立した。 </p><p>【展望】</p><p> 今後、近隣の自治体との「フレイル予防ネット」の提携を拡げ、地域に特化した患者の療養に関連する医療、福祉、社会資源 ( スポーツ関連)を効果的に繋げ、活動性維持による患者の完全な社会復帰を目指したい。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>当院の倫理委員会の承認を得ており、「フレイル予防ネット」事業の参加希望の患者に対しては、 提携する自治体に個人情報の提供に関して、本人同意を取得している。</p>

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