バスケットボール競技における1-2次予防の取り組みから考察する0次予防

DOI
  • 菊元 孝則
    新潟医療福祉大学 理学療法学科 新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 高林 知也
    新潟医療福祉大学 理学療法学科 新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 久保 雅義
    新潟医療福祉大学 理学療法学科 新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 足関節捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,特に跳躍動作を繰り返すバスケットボールで多く発生する.79%の選手が足関節捻挫を経験していると言われ,その中の55%の選手は,受傷後に医療機関を受診していないとの報告もある.足関節捻挫を繰り返すことで,慢性的な足関節不安定感を呈する慢性足関節不安定症 (CAI)を発症する可能性もあり,受傷実態が把握できていないことが問題視されている.スポーツ外傷予防に対する考え方として,van Mechelenが提唱した4段階モデルが用いられているが,足関節捻挫に関しては,第1段階である発生率や重症度の把握すら不十分な現状である.そこで本研究は,独自に企画開発した携帯電話用のアプリ「バスケ手帳」による通知機能を用い,新潟県バスケットボール協会に所属する選手を対象に足関節捻挫の発生率と重症度を把握することを目的とし,その結果から0次予防へ繋げる一助とした. </p><p>【方法】</p><p> 新潟県バスケットボール協会に所属する選手を対象に,2020年2月から4月に足関節捻挫に関する調査を「バスケ手帳」を使用して実施した.調査項目は,年齢,性別,足関節捻挫の既往歴,医療機関への受診の有無,競技復帰状況,また International Ankle Consortiumが定めるCAIの包含基準に必要なアンケート調査を実施した.統計処理にはχ2検定を用い,危険率5%未満を有意差ありとした. </p><p>【結果】</p><p>2,747名(年齢11.56±2.12歳:男性1,446名,女性 1,301名)から有効な回答を得た.足関節捻挫の既往を有する選手は1,072名(39.0%),複数回の既往を有する選手は698名 (25.4%)であった.また受傷後,236名(8.6%)が医療機関へ受診していないと回答した.競技復帰までは平均で9.69±12.38日を有し,疼痛が残存した状態で586名(54.7%)が復帰していた.また,340名(12.4%)がCAIに選定された. </p><p>【考察】</p><p>複数回の足関節捻挫の既往を有する選手が多く,その要因として適切な医療機関に受診せず,疼痛が残存した状態で競技復帰していることが考えられる.足関節捻挫が軽視されている現状があり,その結果,10%超の選手がCAIを発症している可能性が高い. </p><p>【結論】</p><p>バスケットボール競技時における足関節捻挫の再損傷を防ぐため,競技を取り巻く地域や社会が先導する0次予防が必要不可欠である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に本 研究の内容を書面にて説明し、同意を得た上で行われた.なお,本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認 (18583-210218)を 受けて実施した.</p>

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