地域在住高齢者における社会参加促進プログラムが心身機能に及ぼす効果ーアクションリサーチによる取り組みー

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 我が国では,住民が主体となって行う介護予防に大きな期待が寄せられている。しかし,住民が主体となって活動を行うにはどのようなプロセスが必要なのか,主体的に行われた活動にどのような効果があるのか明らかでない。本研究ではアクションリサーチの手法を用いて活動を企画・実施し,地域活動が自主化に至るまでのプロセスとその活動による効果を明らかにすることを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p>対象地区:中核都市A市のB地区 (人口3100人,高齢 化率22.7% (介入開始時))分析方法: (プロセス)活動記録を基に介入過程を時系列の表に整理し,活動が自主化に至るまでのプロセスを分析した。 (効果)対象地区在住の65~79歳の全高齢者 577 名を対象に2年間の縦断調査を行い,郵送による追跡調査に371名から回答があった (回収率85.1%)。調査項目は,基本属性 (年齢,性別等),手段的自立,社会活動,社会的ネットワーク,健康関連QOL等であった。追跡調査では,実施したプログラムの参加状況,ネットワークの主観的変化を調査した。分析は,プログラム参加の有無で2群に分け,プログラム不参加者は傾向スコアマッチングを用いて対照群を抽出した。各変数の変化について,繰り返しのある二元配置分散分析を用いて分析を行った。 </p><p>【結果】</p><p> (プロセス)創出された地域活動は①興味・関心期,②モチベーションアップ期,③協働期,④移行期,⑤自主活動開始期,⑥自主活動期の段階を経て自主化に至った。介入当初は活動の実施に研究者の厚いサポートがあったが,活動の成功などをきっかけに徐々に住民の力で活動を行うようになり地域に定着した活動となった。 (効果)プログラムには2年間で90名 (24.3%)が参加した。二元配置分散分析の結果,健康関連 QOL において有意な交互作用がみられ,単純主効果において不参加群の数値が有意に低下していた。主観的変化では,「地域活動への参加が増えたと思う」が参加群で42.7%,不参加群で17.5%,「地域の人との交流が増えたと思う」が参加群で 50.6%,不参加群で23.8%,「顔見知りが増えたと思う」が参 加群で53.9%,不参加群で27.5%といずれも有意差がみられた。 </p><p>【考察】</p><p>アクションリサーチの手法を用いて創出された住民主体の地域活動は,専門家や行政などが時間をかけてサポートすることで地域活動として定着し,参加者の健康関連 QOL,ネットワークの主観的変化に効果があることが分かった。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究では,郵送調査の対象者に対し,書面にて研究目的,倫理的配慮,個人情報の保護について説明し,回答を得ることによって同意を得た.また,本研究は,桜美林大学倫理委員会にて承認を得ている.</p>

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