地域高齢者の包括的健康調査「お達者健診」

DOI
  • 江尻 愛美
    東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム
  • 河合 恒
    東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム
  • 今村 慶吾
    東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム
  • 藤原 佳典
    東京都健康長寿医療センター研究所 副所長
  • 平野 浩彦
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 笹井 浩行
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 井原 一成
    弘前大学 医学部
  • 解良 武士
    高崎健康福祉大学 保険医療学部
  • 大渕 修一
    東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>東京都健康長寿医療センター研究所(以下、研究所)では、2011年より研究所周辺に在住する高齢者を対象とした包括的健康調査「お達者健診」を実施している。お達者健診の概要、研究成果及び今後の展望を報告する。 </p><p>【方法】</p><p>研究所が継続的に実施してきた「高齢期の健康と自立 の維持と要介護予防のための新たな検診システムの開発」研究に続き、新しい都市高齢者のコホートとして2011年に研究所 周辺の9町丁目に在住する65歳から84歳の高齢者全6,699名(過去のコホートとの重複者、施設入居者を除く)に対し調査案内を送付して受診者を募集した。会場調査には913名が受診し、以後は受診者を追跡するとともに、毎年新たに65歳になった者を追加募集し調査を実施している。2022年時点の追跡対象者は約1600名である。調査項目は、血液検査、看護師問診、体組成測定、運動機能測定、歯科検査、認知機能測定と多岐に渡り、所要時間は約2時間である。研究所内外の複数のチームが連携して調査を実施しており、それぞれの研究テーマを活かした調査設計を行うことで多様なデータ収集が可能となっている。 </p><p>【結果】</p><p>社会実装を意識した新しい機器による生活機能評価に 関する研究を多く行っているのが一つの特徴である。研究成果として、床反力によるサルコペニア検出ツールの開発(Kera et al., 2022)、日常生活歩行速度の確立(Kawai et al., 2020)、タブ レット型認知機能検査の開発(Takahashi et al., 2018)等が挙げられる。また、新型コロナウイルス感染症流行下でも感染対策を講じて調査を継続しており、コロナ禍における高齢者の心身機能の変化についても報告した(Kera et al., 2021; Ejiri et al., 2021)。さらに、フレイル改善促進や化粧ケアなどの健康増進プログラムの介入研究を行った (河合ら, 2021; 2016)。最近では、研究所内外の統合コホートへデータ提供を行っているほか、東京都事業であるスマートウォッチ等デジタル機器活用事業における主要な研究フィールドにもなっている。 </p><p>【考察】</p><p>お達者健診はこれまで、我が国における老年症候群予防の礎となる知見を積み重ねてきた。さらに今後は、昨今の IoTの普及やウエアラブル機器を活用した健康状態のモニタリング技術の向上を背景に、従来の会場招待型ではなく、全ての調査をスマートフォン上で実施する「デジタルコホート」の実現を目指しており、これからのコホート研究の発展のあり方についても議論したい。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>お達者健診は、東京都健康長寿医療センター倫理委員会の承認を得て実施している。</p>

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