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- 片岡 栄美
- 駒澤大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Cultural Omnivores, Habitus and Cultural Capital:
- Cultural Omnivorousness as New Forms of Distinction
- ――文化的雑食性は新しい形態の卓越化か――
抄録
<p> 文化的雑食性は,リチャード・ピーターソンの論文が出て以降,文化実践やテイストと社会的地位の関係を論じる社会学的議論の中心となってきた。本稿は文化的雑食性に関する近年の研究から文化的オムニボア(雑食)のテイストとハビトゥスの諸傾向を整理して,7つの特徴にまとめた。それらは(1)テイストの幅広さと多様性,(2)消費の貪欲性,(3)多様性への開放性と民主性,文化的・政治的寛容性,(4)ジャンルを問わない識別力,(5)特殊なものの選択と識別,(6)新しい美学的感性,(7)文化的ヒエラルキーの改変・創造である。これらの文化的雑食性の特徴は一貫した単一ハビトゥスではなく,相互に矛盾する論点もある。文化的オムニボアには美的感性や文化資本,象徴的排除の感覚,文化的ヒエラルキーへの無関心の点で異なる,少なくとも3つのタイプがある。問題は,文化的雑食性が新しい卓越化の形態なのかであり,この問への答えはまだ未確定だが,文化的雑食性は高い教育水準や知的柔軟性,再帰的ハビトゥス,道徳的基準との関連を示し,卓越化の新しい形態と考えられる。また日本の1995年と2019年の2時点の全国調査を用いて,文化活動パターンを比較した結果,この24年間で高学歴化が進行したにもかかわらず,ハイブラウ,文化的オムニボア,ロウブラウ,非活動層の構成比率に大きな変化はなく安定していることがわかった。ハイブラウなスノッブの比率は少なく,約60%が文化的オムニボアである。そしてオムニボアの人々は他のタイプに比べて,社会的地位や学歴は有意に高い。文化的オムニボアは卓越化したテイストと文化資本を持っているが,教育水準が上昇したにもかかわらず文化消費の構造が変化しなかったことから,日本の学校教育がテイストに与える効果は小さく,卓越化したテイストや文化資本は主として家庭を通じて再生産されていると考えられる。</p>
収録刊行物
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- 教育社会学研究
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教育社会学研究 110 (0), 137-166, 2022-07-30
日本教育社会学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018198841472000
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- ISSN
- 21850186
- 03873145
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可