数学者・遠山啓による学校批判の性格

書誌事項

タイトル別名
  • The Nature of the Criticism of Schools by Mathematician Hiraku Toyama:
  • The Diversity of Critical Discourse on Schools in the 1970s
  • ――1970年代における学校批判言説の再評価――

抄録

<p> 本稿では,1970年代の遠山啓による学校批判言説の検討を通して,同時代の彼の所論の性格を明らかにした。<br> 遠山の学校批判は,受験競争の激化と教育政策における能力主義を背景としつつ,テストの得点をもとにした競争原理と,競争の結果を一元的に配列し,優劣を決定する序列主義への批判によって構成されたものであった。このとき,教育政策のみならず,教師に内面化された能力主義も批判の対象となっていた。なお,遠山は学校批判とともに,それを克服する方途も同時に構想していた。そして,教師に示された方途は,ほとんどが教師個人で対応することが可能なものであった。これは,彼が教師の意識の変革を重視していたことと,受験競争や能力主義など,「現在の体制」下でも,したたかさを持ち,現状を打開する可能性を模索していたことによる。総じて,彼の所論は教師を一方的に指弾する論調にはなかった。もちろん,一部には教師への諫言も存在はしたが,全体を通してみると,明らかに穏当な論調の学校批判であった。<br> 学校批判に関する先行研究や概説書では,1970年代の学校批判において,「学校・教師バッシング」の峻別は曖昧であった。しかし,実態として,当時は,論者や所論の掲載媒体によって,複数性のある学校批判が展開されていた。遠山の所論もそのひとつであった。</p>

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