千葉県の養老川下流域における沖積層の層序と分布

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  • Stratigraphy and distribution of the Post-LGM deposits in the lower reaches of Yoro River, Chiba Prefecture, Japan

抄録

<p>千葉県の東京湾岸地域(以下,千葉県湾岸地域とする)の低地には最終氷期以降に形成された沖積層が分布する.一般に沖積層は含水率が高く軟弱であるため,地震動の増幅やそれに伴う液状化の被害を生じたり,地下水の汲み上げによって地盤沈下を引き起こすことがある.このため,沖積層の分布を詳細に把握することは,このような地質災害の予測や対策において重要である.これまで千葉県湾岸地域の北部では,沖積層の層序や基底分布の詳細が明らかにされてきた(たとえば,潮崎, 2017; 風岡ほか, 2018).一方,千葉県湾岸地域の東部においては,研究は十分ではなく,とくに標準貫入試験等のボーリングデータの層序の基準となるオールコアボーリング調査の数は乏しい状況である.そこで本研究では,養老川下流域の低地および埋立地において,2本のオールコアボーリングを実施し沖積層の層序を調査した.また,公共工事等により得られた既存ボーリング資料を用いて,周辺の沖積層の基底分布について検討した. オールコアボーリングは,千葉県市原市町田の熊野神社(GS-IH-1)において深度35 mまで,養老川臨海公園(GS-IH-2)において深度50 mまで行われた.これらの掘削地点では過去の地震時に被害を受けており,市原市町田では1923年大正関東地震時に家屋の倒壊や地面の亀裂・陥没等(地質調査所, 1925)が,養老川臨海公園では1987年千葉県東方沖地震時に液状化よる噴砂(古藤田・若松, 1988)が確認されている.得られたオールコア試料について,東邦化学工業株式会社製のハイセルSAC-100を用いて剥ぎ取りを行い,層相を観察した.また,コアに含まれる貝化石と有機物の放射性年代測定を行った.さらに,ボーリング孔ではPS検層や密度検層等を実施した. オールコアの柱状図と層相による区分は図に示すとおりである.以下に両コアの概要を述べる.【GS-IH-1】沖積層基底は深度31.44 m(標高-26.3 m)にあり,下位の更新統は貝殻を多く含む中粒砂を主体とする.沖積層は下位より,砂礫層とシルト層の互層からなるユニット1,泥炭を主体とするユニット2,泥層を主体とするユニット3,生物擾乱が発達した砂質シルトおよびシルト質砂を主体とするユニット4,砂層と砂礫層を主体とするユニット5に区分される.地表から深度0.13 mまでは盛土からなる.【GS-IH-2】沖積層基底は深度22.24 m(標高-19.3 m)にあり,下位の更新統は厚い泥がち砂泥互層からなる.沖積層は下位より,砂礫層を主体とするユニットA,貝殻を含むシルト層を主体とするユニットB,砂泥互層からなるユニットC,細〜中粒砂を主体とするユニットDに区分される.沖積層は埋立層に覆われ,両者の境界は深度約5 m(標高約-2 m)付近にあると考えられる. これらのオールコアを基準とし,既存ボーリング資料から沖積層基底の深度分布を調べたところ,沖積層基底は千種海岸で最も深く標高-40 m以深にあり,そこから東南東方向に伸びる埋没谷が認められた.講演では,本研究地域の沖積層基底分布の概略を示す予定である. 引用文献地質調査所, 1925, 関東地震調査報告 第二, 地質調査所特別報告, 185 p.風岡 修・小松原純子・宮地良典・潮﨑翔一・香川 淳・ 吉田 剛・加藤晶子・中澤 努, 2018, 第5章 沖積層及び人工地層, 都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書), 産総研地質調査総合センター, 25–34.古藤田喜久雄・若松加寿江, 1988, 千葉県東方沖地震による液状化現象とその被害, vol. 36, 19–24.潮崎翔一, 2017, 千葉県北西部東京湾岸低地の沖積層基底面図の作成, 千葉県環境研究センター年報 研究報告.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018285211822592
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_235
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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