東五良津岩体のザクロ石グラニュライトの変成温度圧力条件

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  • Metamorphic pressure-temperature conditions of garnet granulite from the eastern Iratsu body

抄録

<p>四国・三波川帯別子地域にはエクロジャイト相変成作用を受けた複数の粗粒苦鉄質岩体(東平・西五良津・東五良津など)が存在する。中でも、より古いグラニュライト変成(例えば、Yokoyama, 1976: J. Geol. Soc. Jpn., 82, 549-551)の痕跡を残す東五良津岩体の起源が沈み込み帯の上盤側(大陸地殻下部)なのか下盤側(海洋地殻表層部)なのかが未確定であり、三波川帯の構造発達史を考える上での重要課題として残されている。一方、隣接する西五良津岩体は層厚100mに及ぶ大理石を含むため沈み込んだ海山・海台起源が確実であり、東五良津岩体がこれといつから履歴を共にしていたのかが1つの焦点となる。Ota et al. (2004)(Lithos, 73, 95-126)は温度圧力条件の連続性等を調べ、両岩体は原岩形成時から一連のものと考えた。さらにAoki et al. (2019)(Island Arc, DOI: 10.1111/iar.12332)は両岩体はもともと一体とみなした上で、地球化学的研究から、それら全体の起源を沈み込む下盤側の海洋性島弧に求めた。これらの説の妥当性の鍵を握るのは、斑レイ岩起源とされる東五良津岩体のグラニュライト変成作用時の温度・圧力条件だと考えられる。変成圧力(深さ)が一定以上に大きかった場合、現在の地質図上での大理石とグラニュライトの近接分布(距離にして約2.5km)を断層の介在なしで説明することはほぼ不可能となるであろう。 本研究では東五良津岩体に由来する4つの転石試料の観察と分析を行い、1試料(BNB3)から斜方輝石を含む鉱物組合せを見出したので、その試料についてより詳しく観察と分析を行った。用いた薄片は径1cm以上のザクロ石巨晶を含む領域、およびマトリクスは輝石が多産する領域、緑簾石が多産する領域に分けられる。  ザクロ石巨晶のリムに近い部分には斜方輝石(OpxIG)が包有物として含まれる。輝石多産領域の単斜輝石(ヒスイ輝石成分はほぼ含まれない)は直径数mmあり、斜方輝石(OpxIC)を包有物として含むものもある。マトリクスの斜方輝石(OpxM)は直径1mmほどで、同程度の大きさのザクロ石や単斜輝石と接している。なお輝石多産領域から斜長石は見つかっていない。緑簾石多産領域は肉眼でほぼ白色を呈し、藍晶石、角閃石、石英、少量の斜長石(大部分はアルバイト)やパラゴナイトを含む。また微小なオンファス輝石(径0.02mmほど)がNa-Ca角閃石の周囲に石英を伴って産する。 ザクロ石の組成はXgrs(0.15~0.18)に大きな変化はないものの、Mg# (Mg/(Mg+Fe))は57~66の幅があり、個々の粒子はリムでMg#が減少する累帯構造をもつ。斜方輝石は場所によって組成が異なり、各粒子内でも非対称な組成不均質がある。Mg#はザクロ石中が最も高く(OpxIG:83.5~87.0)、単斜輝石中で最も低い(OpxIC:80~82)。マトリクスのMg#はそれらの中間の値を持つ(OpxM :81.5~84.5)。またAl含有量にも違いがあり、OpxIGではAl = 0.14~0.17 apfu (O=6)なのに対してOpxICではAl = 0.18~0.21 apfuとなる。マトリクスのOpxMはAl = 0.13~0.22 apfuと不均質で、ザクロ石と接するリム近傍でMg#が高く、Alが少ない傾向がある。単斜輝石は先に記述した微小なオンファス輝石を除くと、すべてNa/(Na+Ca) < 0.12となり、Mg# =86~97のディオプサイドである。また、それらのSi含有量は低く、Si = 1.84~1.94 apfu (O=6)である。角閃石は薄片全体に渡って様々なステージで形成された粒子が産するものの、大部分の角閃石はBサイトのNa含有量が0.5 apfu (O=23)未満のCa角閃石である。 以上の組織的かつ化学組成上の特徴を考慮して、マトリクスの斜方輝石形成時の温度圧力条件を推定する。OpxMでザクロ石に近いリムから0.2mm範囲のAlに乏しいデータの平均組成とそれに接するザクロ石のコアの平均組成を対にとって、ザクロ石-斜方輝石温度圧力計(Harley & Green, 1982: Nature, 300, 697-701; Harley, 1984: CMP, 86, 359-373)を用いて計算すると約780℃, 0.8 GPaといった温度圧力条件が得られた。この圧力は玄武岩質岩(密度3 g/cm3)が上にある場合には地下27 kmに相当するため、海洋底下での変成作用と考えると現在の西五良津岩体との近接関係が説明困難である。このことより、本研究試料の岩石は上盤側の大陸地殻下部での変成作用の後に西五良津岩体と接合して沈み込み、エクロジャイト相での変成作用を受けたものと判断する。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018285211848704
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_29
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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