Reevaluation of "tectonic lines" in the North Kitakami Belt

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  • 北部北上帯における“構造線”の再検討

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<p>北上山地北部には主にジュラ紀に形成された付加体からなる北部北上帯が分布する.この付加体の形成年代は後期三畳紀から白亜紀初期までの幅を持ち1,北部北上帯内の構造区分は長期的なプレート収束帯における付加体形成の歴史を記録していると言える.北部北上帯内の構造区分は,地向斜造山論の時代からの研究史があるが,現在では岩泉構造線を境に西側,すなわち陸側に古生代の海洋性岩石を含む葛巻-釜石亜帯があり,東側,すなわち海側に古生代の海洋性岩石を含まない安家-田野畑亜帯があるとする,大上・永広(1988)2により提唱された区分が主流である.また,その下位のオーダーでは岩相的特徴から認識される付加体のユニットが,構造的下位により若い付加年代を持つように累重するとされる3, 4.一方で,前記の亜帯区分の境界がユニット区分の境界に対してどのような理由から上位階層の境界と言えるのかは明確でない.本研究では,5万分の1地質図幅「門」作成の一環として岩泉構造線および多くのユニット境界を横断する岩泉町安家地域から葛巻町江刈地域にかけての地質調査を行った.また,付加年代に関する情報を充実させるために,泥質岩中に整合的に挟在する凝灰岩中のジルコンおよび砂岩中の砕屑性ジルコンについてウラン-鉛年代測定を行った.調査地域では,構造的下位より安家ユニット,高屋敷ユニット,関ユニット,大鳥ユニット,葛巻ユニットが分布するとされる3, 4(ただしここでは中江ほか, 20214のコンプレックスはユニットに換えて引用している).なお,中江ほか(2021)4では安家ユニットを高屋敷ユニットに含め,関ユニットを構造的下位の関ユニットと合戦場ユニットに分けているが,本研究では上記区分を用いる.本研究において安家,高屋敷,関,大鳥ユニットについては構造層序的区分の大きな変更はないが,新たに高屋敷ユニットの泥岩の下位の凝灰岩から156 Ma,関ユニットの珪質泥岩中の凝灰岩から167 Ma,大鳥ユニットの泥岩中に挟在する凝灰岩から167 Maの年代を得た.ぞれぞれのユニットの砂岩中の砕屑性ジルコンの最若クラスター年代は,154 Ma,171 Ma,172 Maであり,高屋敷ユニットを除き泥質岩より古いため,堆積年代を示していない可能性が高い.先行研究も踏まえると,各ユニットの付加年代は,大鳥ユニットがバトニアン期,関ユニットがバトニアン期からキンメリッジアン期,高屋敷ユニットがキンメリッジアン期となり,構造的下位に向けて若くなる.葛巻ユニットの分布域とされた江刈地域では大幅な改訂が必要である.本地域では,葛巻ユニットは葛巻断層の西側にNW–SE走向SW傾斜をもって分布し,葛巻ユニットの由来となった葛巻層が提唱された北西の地域へ連続するとされていたが,実際にはNNW–SSE走向を持ち南東にプランジした背斜構造が支配的である.この背斜をなす地層中の珪質泥岩に挟在する凝灰岩からは153 Maの年代を得たが,これは北西に離れた一戸地域で得られている葛巻ユニットの泥岩から得られた放散虫の年代(中期ジュラ紀)より大幅に若い.以上から,江刈地域の葛巻ユニットとされていた地層にはこの名称は用いるべきではなく,ここでは江刈ユニットと仮称する.江刈ユニットの凝灰岩の年代は大鳥ユニットや関ユニットの凝灰岩の年代よりも若く,高屋敷ユニットの凝灰岩の年代に近い.したがって,江刈地域の背斜軸を中心として,構造的下位の高屋敷ユニットあるいはそのさらに構造的下位に相当する地層が分布していると判断できる.岩相の特徴においては,江刈ユニットは主に砂層を含む泥岩や砂泥互層の破断相からなる点で高屋敷ユニットに類似するが,後者に特徴的に見られる礫岩や玄武岩類は前者ではほぼ見られない.従来,高屋敷ユニットから構造的下位のユニットは岩泉構造線より東にしか分布しないとされていた.本研究により岩泉構造線より遥か西方に高屋敷ユニットないしさらに構造的下位のユニットが存在する可能性が示されたことで,岩泉構造線は付加体のユニット境界と同階層のものに過ぎない可能性が提示された.さらに,かつて葛巻構造線とされた葛巻断層も,少なくとも本地域においては構造的下位の江刈ユニットを相対的に上昇させた断層であり,付加体の形成時に構造を規制した類のものではない.文献 1 Uchino, T. & Suzuki, N. Bulletin of the Geological Survey of Japan 71, 313–330 (2020)2 大上和良・永広昌之 地球科学, 42, 187–201 (1988)3 高橋聡ほか 地質学雑誌, 122, 1–22 (2016)4 中江訓ほか 地域地質研究報告, 陸中関地域の地質 (2021)</p>

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