飛騨帯とLaoelin-Grodekov帯(ロシア・中国・北朝鮮国境)との対比および大和構造線の意義:極東アジアにおける花崗岩年代・植物化石・砕屑性ジルコン年代スペクトルの共通点

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  • Correaltion between the Hida belt and the Laoelin-Grodekov belt (Russia/China/N. Korea border) with implication to the Yamato tectonic line: common granitoid ages, plant fossils, and age spectra of detrital zircon

抄録

<p>大・南中国(Greater South China; GSC)は、現在の中国南部に加えて、東シナ海や西南・東北日本を経て、現在のロシア(沿海州)・中国(吉林・黒龍江省)国境のKhanka-Jiamsi-Bureya(KJB)帯まで連続していたとして復元された古生代地塊である(Isozaki, 2019)。日本の顕生代地殻の大部分は、このGSC地塊の古太平洋側でのプレート沈み込みで形成されたNipponides造山帯の産物である。日本列島中央部の飛騨帯はその例外で、GSC地塊との関連を示す証拠を全く持たない。飛騨帯は伝統的に北中国地塊の一部とされてきたが、先カンブリア時代基盤岩を完全に欠いており(椚座ほか, 2010など)北中国地塊との比較も難しい。  飛騨帯を特徴付ける約250-230 Maと200-180 Maの2つの年代の花崗岩類(Takahashi et al., 2018など)の共産は、大和堆を経て、日本海対岸のロシア・中国・北朝鮮国境域や、さらに中国北東端の小興安嶺東部まで追跡される(Isozaki et al., 2021, 2023)。露/中の長い国境域に沿ったKJB帯(=GSC地塊北端)の西隣には、幅200 kmの独立した地体構造単元としてLaoelin-Grodekov(LG)帯が産する。ちなみに北中国地塊の北東端はLG帯のさらに南西方に位置する。大和堆を介して連続していたLG帯と飛騨帯は古生代後期の海棲動物化石を産し、かつてGSC地塊の西側にあった古生代海域に起源を持つと判断される。  飛騨帯とLG帯には保存良好な植物化石を多産する厚い砕屑岩相白亜系が分布し、飛騨帯では手取層群、LG帯ではNikan層群と各々呼ばれる。近年の砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定により、手取層群内の対比や後背地推定の議論が進んだ(Kusuhashi et al., 2006; Kawagoe et al., 2012; Nagata et al., 2018など)。中でも、手取層群中の巨礫から検出された後期三畳紀A型赤色花崗岩(Isozaki et al., 2023)は重要である。同年代類似岩の産出は東アジアでも希少で、わずかに小興安嶺(LG帯の北方延長)にのみ報告例があり、古生代末-中生代前半における飛騨帯とLG帯の連続性を強く支持する。一方、Nikan層群中部Lipovtsy累層は採掘品質の石炭層を挟む非海成層からなり、手取層群と一部共通の植物化石を多産する(Kovaleva et al., 2016; Volynets & Bugdaeva, 2017など)。Lipovtsy累層上部の砕屑性ジルコンU-Pb年代スペクトル(Isozaki et al., 投稿中)は、手取層群上部のものと類似し、LG帯と飛騨帯とが少なくとも白亜紀前期の間、ほぼ同一の堆積盆地および後背地を共有したことを示唆する。中新世の日本海拡大までは両帯が一連の単元として繋がっていたと考えて問題ない。  北東アジアにおいて、南北方向に伸びるGSC地塊+太平洋縁Nipponides造山帯に対して、シベリア、北中国・タリム地塊間の古アジア海閉塞域の産物としての中央アジア造山帯は東西方向である。両大構造の接合は、GSC地塊・LG帯間の牡丹江断層など南北方向の断層境界として認識され、日本では飛騨帯と太平洋側の諸単元との境界(長門-飛騨外縁構造線)がそれにあたる。大和構造線(Yamato tectonic line;YTL)と総称されるこの南北方向の接合境界は、極東アジアで最重要の地体構造境界と位置付けられる(Isozaki et al., 2023)。 文献:Isozaki (2019) Is. Arc 28, e12296; Isozaki et al. (2021) Bull. Nat. Mus. Nat. Sci. C47, 25-39; Isozaki et al. (2023) Is. Arc 32, e12475 ; Kawagoe et al.(2012) Mem. Fukui Pref. Dinos. Mus. 11, 1-12 ; Kovaleva et al. (2016) Russ. Jour. Pacif . Geol. 10, 50-62; 椚座ほか (2010) 地質雑 116 Suppl, 83-101; Kusuhashi et al. (2006) Is. Arc 15, 378-390; Nagata et al. (2018) Mem. Fukui Pref. Dinos. Mus. 17, 9-26; Takahashi et al. (2018) Is. Arc 27, e12220; Volynets & Bugdaeva (2017) Is. Arc 26, e12171.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018285212019200
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_53
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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