アイヌ語の所属形は「もの」から来たか
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- 佐藤 知己
- 北海道大学
抄録
アイヌ語の名詞の所属形の起源として,名詞化辞 *IHI を仮定する考えが従来か ら提案されている(中川 1983)。南 (2020) は中川の提案に基づき,Creissels (2009) を援用して中川説を補強している。しかし,中川,南の主張は,類型論的,音韻的, 統語的観点のいずれの点からも問題が多い。また所属接尾辞の不規則性を説明する ための Janhunen (2020) の提案は,アイヌ語の歴史に大規模な母音脱落や子音脱落 があったことを仮定するが,子音や母音の「脱落」が概念形の形成や他動詞からの 逆使役のような,極めて限られた形態領域にしか起きないという問題がある。この 論文では概念形や逆使役の意味的特殊性に着目し,かつてのアイヌ語では,言語学 的に著しく有標な形態を形成する手法として,「マイナス特徴」が用いられたので はないかという仮説を提案した。この手法は,本来備わっているべき特徴(他動詞 における動作主,身体部位名詞における特定性)の欠損という異常な事態を表示す る手段として用いられたが,類像性を帯びるために一部の形式に使用が限定され, その後,接尾辞の付加として再解釈された可能性があることを指摘した。
収録刊行物
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- 歴史言語学
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歴史言語学 12 (0), 53-70, 2023-12-27
日本歴史言語学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390018351897973504
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- ISSN
- 27586065
- 21874859
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可